コロナで戦後最悪の「GDP28%減」 JAL、ANAの悲痛な叫び 

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国際線は96%減

 そんななかANAもJALも、お盆の需要に期待をかけていたが、結果は虚しかった。ANAホールディングス広報部に聞くと、

「国内線は5月末に相当落ち込んだあと、6月になると直前の予約が増え、夏休みの予約が入り、右肩上がりになっていました。ところが7月頭からの感染者数の増加を受け、予約が鈍化。お盆の実績は旅客数で対前年比約7割減、国際線に至っては約96%減。4%しかお客さまが搭乗されなかったんです。業績的にもかなり打撃がありました」

 東京都の小池百合子知事が今夏を「特別な夏」と位置づけ、「旅行、帰省をお控えください」と訴えた影響は大きかっただろう。結果、東京は「Go To トラベルキャンペーン」の対象から外され、お盆の行楽ムードは一気にしぼんだ。

 そうした一つひとつが社会の基盤を蝕み、ついには瓦解させかねない。そのことの恐ろしさは、国内の死者が未だ1200人ほどの感染症とは、くらべるべくもないはずだが。

 小池知事の無定見を話題にしたついでに、彼女が率いる東京都の不可思議を、ほかにも指摘したい。

 新型コロナの感染状況の深刻さを判断する際、最も重要なのは重症者数と死者数である。ところが死者の発生後、都がそれを発表するまで、最大43日もかかっているのだ。また、厚労省は重症を「集中治療室(ICU)で治療」「人工呼吸器を使用」「体外式膜型人工肺(エクモ)を使用」のいずれかに当てはまる場合と定義しているのに、都はICUの患者を除外していた。

「重症者をどうカウントするかは大事な問題。重症者という言葉の一人歩きは避ける必要があり、定義を共通させてほしい」

 とは、感染症に詳しい浜松医療センターの矢野邦夫医師の意見である。しかし、東京都福祉保健局に聞くと、

「死亡者は、医療機関が保健所に死亡の連絡をし、その後、都に連絡がありますが、医療機関からの連絡が遅れたりすると、発表が遅れることがあります」

 と、まるで他人事。またICUの患者を除外していることについては、

「ICU在室者が必ずしも重症ではない、人工呼吸管理下の重症者は必ずしもICUにいない、集中治療の基準が病院によって異なる場合がある、などと医療現場から聞いており、引き続き現行の通り、重症者数を発表していきます」

 と答えた。前都知事の舛添要一氏は、不可思議のわけをこう読む。

「仮に都の定義のほうが正しいとしても、データは統一して比較しなければ意味をなしません。東京都は全国と足並みをそろえることを拒否していると言え、要は、小池知事が国とケンカしているというパフォーマンスを見せたいだけでしょう。“国に屈せずに頑張っている”とね。死者数の公表の遅れも根っこは同じで、データの扱いや情報公開がずさんなのです」

 自分さえ支持されれば、後は野となれ山となれ、という小池知事の姿勢の、見事な反映と言えようか。

 話を戻せば、ANAホールディングス広報部の話はこう続く。

「ポイントは国内需要の復活と海外渡航の解禁で、お客さまのマインド次第ですが、マインドはなにかあれば冷え込みます。われわれはPCR検査や検疫体制の強化を期待しつつ、安心してご利用いただけるように準備するしかありません」

週刊新潮 2020年9月3日号掲載

特集「あまりに大きい代償! もうやめてはどうか『コロナ恐怖』煽り」より

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