いよいよ「わたナギ」最終回 で、結局メイとナギサはどうなるのか?

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 人気沸騰中の連続ドラマ「私の家政夫ナギサさん」(TBS、火曜午後10時)が9月1日、最終回を迎える。多部未華子(31)が演じる主人公・相原メイは前回第8話でナギサ(大森南朋、48)にプロポーズをした。はたして2人はこのまま結ばれるのか? エンドマークが出るまで目が離せそうにない。

「私の家政夫ナギサさん」の前回第8話までの平均世帯視聴率は14・47%。大ヒット作として語り継がれている同じTBSの「逃げるは恥だが役に立つ」(2016年)の全話平均視聴率も14・47%なので、ピッタリと並んでいる(ビデオリサーチ、関東地区の数値を基に算出)。

「わたナギ」が最終回で14・5%を上まわると、「逃げ恥」超えとなる。「わたナギ」の前回第8話は16・7%だから、十分可能だろう。テレビ離れが叫ばれているが、面白いドラマなら「半沢直樹」(日曜午後9時)でなくても当たることが証明される。

 メイとナギサは結ばれるのか。第8話はメイがナギサにプロポーズする場面で終わった。

「あっ、あの、そのー、じゃあ私たち…結婚しませんか!」

 ナギサから人事異動でいなくなることを伝えられたメイが狼狽し、咄嗟に結婚を口走ったのだった。最終回では、ひとまず4日間のトライアル結婚生活を送り始める。

 メイはプロポーズの直前、こう漏らしている。

「ナギサさんのいない生活なんて考えられない…」

 スーパー家政夫のナギサが消えたら、天保山製薬のMRとして多忙な日々を送るメイの自宅は、汚部屋に戻るだろう。なにより、ナギサは単に家事を代行してくれる人でなく、お母さんのような心強い存在であることをメイは自覚している。

 メイが仕事で失敗したときには優しく励ましてくれた(第1話)。仕事で無理をしそうになると、強く戒めてくれた(第6話)。まさにお母さん。失いたくはないはずだ。

 お父さん的な男性を好きになる女性はこれまでドラマに数えきれぬほど登場した。一方、お母さん的な男性に惹かれる女性にフォーカスが合わせられたドラマは例がないはず。多様性を認めることが求められている時代らしい物語になった。

 片やナギサはというと、はっきりとした意思表示は一度もしていないものの、やはりメイに好意を抱いている。

 再び第8話でのこと。メイが自宅に同僚の陶山薫(高橋メアリージュン、32)を招き、アーノルド製薬のMR・田所優太(瀬戸康史、32)から求愛されたことを相談すると、ナギサも話に割って入り、親身なアドバイスを送った。

 もっとも、この熱の入ったアドバイスによって、ナギサの秘めた思いが薫にバレた。薫はナギサと2人きりになると、こう迫った。

「このままだとお宅の娘さん、本当にお嫁に行っちゃうかもしれませんよ」

 ナギサは「私は家政夫ですから…」と、特別な思いを否定したが、言葉とは裏腹に表情は引きつっていた。

 メイとナギサはお互いに相手のことが好き。もっとも、だからといってゴールインするとは限らない。

 ナギサは50歳でメイは28歳。結婚に年の差は関係ないものの、ナギサは自分のことを「オジサン」と自嘲気味に言い、かなり気にしている。最後にはメイの保護者的立場を選び、身を引く可能性もある。

 実際、同じ第8話でナギサはメイに田所を勧めていた。

「田所さんならメイさんのことをちゃんと受け止めてくれると思います」

 確かに田所ならメイと似た者同士で、いいカップルになるかもしれない。2人とも家事が全くダメだが、仕事はできる。2人で暮らしたら、汚部屋になるのは確実であるものの、家事で困ったらナギサとは違う家政夫か家政婦を雇えばいい。

 結婚生活のトライアル後、最終的にメイはどちらを選ぶのか。それとも2人とも選ばないのか。ポイントはメイのナギサに対する思いの深度だろう。

 家事もやってくれるし、見守ってくれるから、ナギサと離れたくないのか。それとも、やがてナギサが高齢となり、家事が出来なくなってもいいから、ずっと一緒に居たいのか…。

 以下、なぜ、このドラマが人気沸騰したのか考えてみたい。

応援したくなるキャラクター

 まず、メイがすこぶる魅力的なキャラクターだったからだろう。仕事人間で、上司から成績を誉められると、「さらに上を目指して頑張ります」(第1話)と胸を張る。チームをまとめるリーダーに抜擢されると、ますます大張りきり。

 この一面だけ捉えると、近寄りがたい気もするが、本当は真面目で素直なだけ。母の美登里(草刈民代、55)や周囲の期待に応えようと、遮二無二に頑張り続けてきた。寝食を惜しんでいた。ナギサが仕事のセーブを勧め、「メイさんのことが心配なんです」(第6話)と、語気を強めたのもうなずける。

 かわいらしいところもある。第2話でのこと。研修生で部下の瀬川(眞栄田郷敦、20)が田所を絶賛し、「彼は人間が出来ている」としみじみ語ると、「私が出来てないみたいじゃん」と、ふくれっ面に。いや、それをリーダーが口にするのはマズイかと…。

 天然ボケでもある。4話でのこと。飲み会で遅くなることをナギサに伝え、夜食を頼んだ際の言葉は、「小腹が空きます。少しジャンクかつヘルシーな夜食をご用意していただけますか」。大いに矛盾する。これには料理の達人であるナギサも顔色を失った。

 無邪気でもある。第6話ではナギサを尾行。プライベートを探るためだった。ところが、秘かに追うつもりで着用したサングラスが、ヨーロッパのセレブが愛用するような猫の目タイプ。逆効果となってしまい、小学生に笑われた。もちろんナギサにもバレた。

 素直で真面目、かわいらしく、天然ボケで無邪気…。愛されるキャラクターに違いない。見ている側としては応援したくなるだろう。

 そんなメイに多部が成りきった。多部は過去、読売演劇大賞優秀女優賞など数々の演技賞をほしいままにしており、妖女も聖女も名演するが、メイ役はとりわけハマった。

 やはりヒット作となった2019年のNHK「これは経費で落ちません!」で演じた森若沙名子も仕事に邁進する女性だった。多部自身、15歳でデビューしてから写真家の熊田貴樹氏と昨秋、結婚するまで醜聞とは一切無縁で、学業と仕事に専念してきた。自分と同じ真面目な女性に扮すると、気づかぬうちに演技を超えた何かが表れるのかもしれない。

 助演陣も良かった。ナギサ役の大森はコミカルな場面で名演を連発したが、ペーソスに満ちた演技も見事だった。

 第8話でのこと。メイは妹の唯(趣里、29)から、娘のモモが保育園でケガをしたので代わりに迎えに行ってほしいと頼まれた。そこでメイは一緒にいた田所と保育園に出向いたが、その場面をナギサが見てしまう。ナギサも唯に頼まれていた。

 同年代同士で、仲睦まじく見えたメイと田所。ナギサは気後れし、声も掛けずに立ち去る。その後のナギサは肩を落としていたわけでもないのに、憔悴しきっているのが見て取れた。背中には哀愁が満ちていた。大森のうまさが生かされた場面だった。

 演出も脚本も文句なしで、滅多に見られない極上のハートフル・ラブコメディに仕上がった。高視聴率は全く不思議ではない。

高堀冬彦(ライター、エディター)
1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長。2019年4月退社。独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月31日掲載

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