コロワイド、大戸屋への敵対的TOB不調、“リアル半沢直樹”は第二幕へ

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謎を呼ぶ対談

 さらに、大戸屋の窪田健一社長と元気寿司の法師人尚史社長との対談も公開した。その内容がまた、意味深だ。一部抜粋してみよう。

法師人:業界の競争が激しくなると店舗運営の効率化を実施するのですが、効率化により品質が落ち、お客様の評価も落ちていくという事実を、私は現場で目の当たりにしました。

窪田:お客様に満足していただくには、作り立て、出来立ての美味しさをお届けすることで、それには店内調理が欠かせません。

法師人:大戸屋さんとは、作り立て、出来立ての美味しさ、料理の温度とか香りとか…、本物志向という考え方については、とても共感できます。

窪田:シナジー効果があり同じ理念を持った企業さんとは何かの形で接点を持ちたいと思っています。

 一体誰に向けて言っているのだろうか、と考えてしまいそうな内容だ。ひょっとしてホワイトナイトが現れるのだろうか。

「何やら思わせぶりな対談です。この元気寿司の親会社が国内トップの米卸会社・神明ホールディングスです。これまで、いろんな飲食業界におけるM&Aを仕掛けてきた会社です」(同)

 コロワイドのようにM&Aで成長してきた会社だろうか。

「社長の藤尾益雄氏は、和食文化を自分たちで広げていくという使命感のある方で、メディアにもファンが多い。一方で、コロワイドとの関係も悪くありません。現在、コロワイド傘下のかっぱ寿司の大株主だったのが神明でした。神明は元気寿司とカッパ寿司を統合することで、日本一の寿司チェーンにしようとしたんです。でも結局は上手くいかず、かっぱ寿司の戦略的価値が見えにくくなった時に、コロワイドに売却したんです。いまも神明はかっぱ寿司と取引があるということなので、友好的な関係なのだと思います」(同)

 では、この対談にはどんな意味が?

「コロワイドにとって大戸屋の戦略的価値は、昨年10月に株を手に入れた時とはずいぶん変わってしまったと思います。第1四半期の赤字は会社規模を考慮すれば大戸屋のほうが多いのですから。にもかかわらず、45%ものプレミアムを付けて大戸屋株を買い増したところで、コロワイドにメリットはないでしょう。それでなくとも、企業買収で支払った純資産を超える差額(のれん)が718億円ほどが手つかずで残っており、有利子負債も1200億円ほどある。たとえ、大戸屋のTOBを下限変更・期間延長で成功させたとしても、これ以上、のれんを増やすことに意味があるとは思えません。そんな中、神明グループが大戸屋との対談に応じたということは、コロワイドが持っている大戸屋株、買い増した株を、神明で引き受けても良いという“メッセージ”ではないか、と見る人もいるんです。敵対的TOBに対してホワイトナイトになるとかではなく。かつて神明が戦略的価値を失った会社を引き取ってもらったから、今度は自分たちが、という意味かもしれません」(同)

“倍返し”ならぬ、“恩返し”ということだろうか。

「むしろ神明となら、大戸屋も上手くやっていけるかもしれません」(同)

 第二幕はどんな展開になるのだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2020年8月28日掲載

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