弟子が集団脱走の式秀部屋 パワハラおかみが力士に送った“恐怖のLINE指令”

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「週に3日しか稽古を許されてない」

 公私にわたり力士らを支えて来たA氏がさらに懸念するのは、「これはもはや、いち相撲部屋だけの問題ではない。公益財団法人日本相撲協会に所属する親方として、職務をまっとうできていないのでは」ということだ。

「今年1月場所前に、業務のやりとりで、ある親方が式秀親方に電話したが、代わりに出たのはおかみさんでした。その後も心配した仲間の親方衆が部屋まで駆け付けるも、おかみさんが式秀親方に会わせない。体調の悪さを同僚の親方たちに知られたくなく、かばってもいたのだとは思いますが……。今年1月から本場所もずっと休場中ですし、もはや部屋の師匠として努めを果たせるのか、おおいに疑問を持ちます」

 式秀親方に異変があったのは、昨年12月のこと。高血圧で、杖をつく姿も見られたという。しかし、力士たちには詳しいことは一切聞かされていないままだった。

「『うちの親方、どこか悪いのか?』と心配しつつも、なかなか聞けなかったというんですね。おかみさんが親方の携帯電話を握っている。力士たちが親方と話したいことがあっても、おかみさんを通さないと会話も許されていなかったと聞きました」(A氏)

 本来なら自由に稽古場に下り、土俵で稽古やトレーニングに励むのが力士の本分なのだが、おかみさんが「勝手に土俵に下りるな」と制限し、稽古もシャワーも、すべてが事前予約制なのだという。どれもコロナ対策のためと言われれば、力士たちも反論できない。

 別の部屋のベテラン力士がこう証言する。

「本場所で顔を合わせて、力士同士でちょっと話すじゃないですか。式秀部屋の力士が『稽古をしたくとも制限され、週に3日しか稽古を許されてないって。5月場所は中止でしたけど、『3月場所も7月場所も、場所中の稽古が一度もなかった』と言っていたので、驚きました。俺は『楽でいいじゃないか~』なんて笑ったんですけど、『もっとお相撲さんらしい生活をしたい。最弱部屋などと言われるが、僕たちは強くなりたいんですよ』と訴えるんですよね。同じ相撲取りとして、ちょっと可哀想でしたね」

 A氏は、さらにこう同情するのだ。

「協会の指導どおりに師匠と面談をしましたが、力士のなかには、もはや師匠夫妻とは信頼関係を築けない、と言う子もいる。10代、20代の若者たちの教育的側面もあるのが相撲部屋のはず。まさに“師匠不適格”だと言えます。先日、中川部屋の親方の暴言や暴力で部屋が閉鎖されましたよね。それにも匹敵するんじゃないか。部屋の体制が嫌なら相撲を諦めて引退するしかない、というのは酷ですよ。彼たちは相撲を続けたいと願っている。師匠が別の親方に代わるか、他の部屋に移籍して仲間同士がバラバラになってでも相撲を続けたいとまで言っているんです。相撲協会も『師弟の問題』と丸投げしないで、今一度 彼らの叫びに耳を傾けてくれないでしょうか」

 古くは「土俵には金が埋まっている」と親方が力士たちを叱咤したものだった。しかし、式秀部屋の稽古場には、若い力士たちの“理不尽さに耐え続ける泣きの涙”が染み込んでいるのだ。

週刊新潮WEB取材班

2020年8月16日掲載

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