文在寅も激励、日本国内の「最後の徴用工村」…政治的に利用されてきた歴史をひもとく

国際 韓国・北朝鮮

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土地ころがしで利益をむさぼったのは同胞

 また、歴史を歪曲してまで、日韓間の不和を助長し、これを政治的に利用、あるいは扇動してはいけないということ。60万の在日韓国人(朝鮮人)も、自分たちが政治的に利用されることを望んではいないはずである。

 付け加えておけば、1945年、日本の敗戦後、ウトロ地区は、軍の飛行場建設事業を受注していた国営企業・日本国際航空工業の所有であった。軍需企業だった国際航空工業は敗戦後、バスやトラックを製造する自動車会社に変身し、1962年には日産自動車系の日産車体と合併、その時からウトロ地区は、日産の所有地となっている。その後ウトロ地区は、個人所有を経て、1987年に西日本殖産に転売され、その後もう一回の転売を経て、現在の所有者(ウトロ民間基金財団、韓国政府が支出したウトロ一般財団法人、不動産会社「西日本殖産」)の土地となった。

 ところが、この過程で全くとんでもないことが起こった。日産車体からウトロ地区の土地を買って西日本殖産に土地を転売したのはある個人なのだが、それが他でもないウトロに住んでいた在日韓国人Aだったということである。買収額は3億円。

 この在日韓国人Aに資金を融資したのが、在日本大韓民国民団(『民団』と略称)の幹部Bであり、この幹部Bがウトロ村(地区)を買い取ろうと作った会社が、まさに「西日本殖産」だったのである。つまり、民団の金持ちの幹部BがAという案山子を立ててウトロ地区を買い入れたということになる。民団幹部Bがウトロに住む在日韓国人(朝鮮人)の居住権のために土地を買収したのでは? いや、そんなことは絶対になかった。

 ところが、私をもっと驚かせたのは、日産から3億円で土地を購入したAがこれを4億円で買い取ったと主張して西日本殖産、すなわちBから4億5000万円を受け取ったということである。同じ「同胞」に詐欺を働き、巨額の金を手にした在日韓国人Aは、夜逃げをし、Bも1988年に西日本殖産を日本企業に売却してしまったのである。民団幹部Bがいくらでウトロ地区を日本企業に売り渡したのかは知られていない。

 言いたいことはたくさんあるが、少し前に読んだある新聞記事の一節を引用して終わりたい。

「国家間であれ、個人間であれ、『和解』のためには、基本的な情報を得るのが優先である。耳を傾け、お互いの話を聞くこと。情報を取得し、理解するために感情は最大限に排除すること。深くなった感情の谷は、味方を敵にまわしたりもする」

李東原(イ・ドンウォン)
日韓関係史が専門の評論家

週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月12日掲載

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