「コロナ失業」で生活苦へ一気に転落した人々の告白…忍び寄る詐欺の魔の手

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「仕事の保証料」として20万円を振り込むよう

 手口は単純明快で、月収50万円になる仕事があるという書き込みを見たBさんが記載されているアドレスにメールを送った。すると、Aさんと同じように、一定期間で送受信内容が消えるアプリをスマートフォンにインストールするよう相手から指示があった。そこで、「仕事の保証料」として20万円を振り込むよう口座を指定されたという。そして振り込んでからは音信不通に。

 フリーメールとは言え、簡単に足がつくような雑な詐欺だ。警察に被害届を出せば犯人は逮捕されるだろうが、Bさんは頑なに被害届を出そうとしない。理由は周囲へ詐欺に引っ掛かったとばれたら恥ずかしいからだという。「どのみちお金は戻ってこないでしょうし、そのうえ恥までかきたくない」とBさん。今回の取材も、電話でのみのやり取りだから受けたという。

 関係者以外には全く分からない感覚だが、かつて詐欺グループで働き逮捕された経験のある男性は、Bさんのような被害者の心理を「少額の被害だと騙されたことを恥ずかしいと感じ、被害届を出さない傾向にある」と話す。

「よくあるケチな詐欺には違いないが、リーマンショックの時のように突然景気が悪くなると金に困って応募してくる奴は増える」(元詐欺グループの男性)

 この男性によると、騙された人間は別の詐欺にも同じように引っ掛かるため、連絡先などは名簿化され別の詐欺グループに売られることもあるのだという。また、詐欺の被害者をリクルートし、特殊詐欺の受け子など逮捕されるリスクのある役割に使役するケースもあり、被害者が加害者に転じる可能性もあると補足する。

 コロナの影響で突如仕事を失い、詐欺に心を動かされる人間はごく一部だろう。だが、彼らも生活が困窮しなければ詐欺に心を動かされることはなかったはずだ。

畑中雄也(はたなか・ゆうや)
1980年生まれ。出版社、新聞社勤務を経て現在は食品製造業を経営。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年8月11日掲載

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