「TikTok」を警戒する米国、インド 能天気な日本(KAZUYA)

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 若い世代を中心にヒットしているショートムービー投稿アプリのTikTokは、今や世界で20億ダウンロードを超えるほどになっています。

 大人気ですが、中国企業が作っているという時点で懸念は払拭できません。TikTokを運営するのは中国北京に本社があるバイトダンスです。

 中国には「国家情報法」が存在し、政府に求められた場合、企業と国民は情報を提供する義務があります。つまりTikTokを介して中国に利用者の情報が掠め取られているのではないかとの疑惑があるのです。バイトダンスは中国政府との距離をアピールしますが、根っこの部分で信用できないのが中国企業の悲しいところで、本当に中国共産党とは罪な存在です。

 インドは中国との軍事的な小競り合いで死者を出したのち、国家安全保障上の問題を理由にTikTokを始めとする59の中国アプリの禁止を発表しました。インドはTikTokだけでも6億ダウンロード以上を誇る巨大市場ですから、バイトダンスとしても大きな痛手でしょう。

 アメリカでも以前からTikTokの危険性が指摘されています。この原稿の執筆段階で、連邦政府職員が政府支給の端末を使ってTikTokを利用することを禁止する法律が作られているところです。

 また、ポンペオ国務長官はTikTokを米国で禁止する検討をしているとも明かしています。アメリカはファーウェイを始めとする中国企業を締め出しにかかっていますから、ハードとソフトの両方から中国を叩き潰していくつもりなのでしょう。一方、能天気な日本では……。

 特段の危機感もなく、地方自治体がTikTokとの連携を進めています。

 例えば7月21日、バイトダンスは大阪府との事業連携協定締結を発表しました。若者世代への情報発信としてTikTokを使用し、そのサポートをバイトダンスがするという話です。

 神奈川は都道府県では初めてバイトダンスと連携協定を結んだ県です。昨年からTikTokを使った情報発信を行い、黒岩知事が自ら動画に参加しています。他にも県だと広島県、埼玉県などもTikTokの活用を進めているようです。

 この危機感のなさには呆れてしまいます。今後も米中は世界の覇権を巡って長期的に本気のぶつかり合いを展開していくでしょう。日本としてはアメリカと組むしか事実上選択肢がない以上、長期的な視点で考えるべきです。日本人は空気を読むのが得意なのに、国際情勢では全く読めていません。

 情報を抜かれているんじゃないかという点に関しては、アメリカも中国のことを言えない面もあるでしょう。これは究極の選択で、アメリカに盗まれるか、中国に盗まれるかの違いです。しかし、どっちもどっちかと言えば少し違うでしょう。中国は独裁国家であり、香港への国家安全維持法の適用を巡る経緯を見ても、強権的な姿勢が目立ちます。アメリカは日本と同じく民主主義国家ですから、情報を盗まれるのはどっちも嫌だけれども、まだアメリカの方がマシに思えます。

KAZUYA
1988年生まれ、北海道出身。2012年、YouTubeで「KAZUYA Channel」を開設し、政治や安全保障に関する話題をほぼ毎日投稿。チャンネル登録者73万人、総視聴数は1億4千万回を超える。近著に『日本人が知っておくべき「日本国憲法」の話』(KKベストセラーズ)

週刊新潮 2020年8月6日号掲載

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