コロナ禍で売上激減「クリーニング業界」の惨状 悪徳業者は淘汰される可能性

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ブラック業者を駆逐すべき

 コインランドリーという新しいビジネススタイルが生まれても、新型コロナウイルスがもたらした売上減が上回ってしまう。そのため一部のクリーニング業者は、“反則技”に手を染めているという。

「労働基準法に抵触する、残業代の全額カットが横行しています。景品表示法を無視し、年がら年中『半額セール』を謳っている業者が、新型コロナの売上減で更にセールに力を入れてしまうというケースも目立ちます。先般は摘発されたケースもありましたが、文字通り氷山の一角です。もともとドライクリーニングの工場は建築基準法の違反が常態化しており、最悪の場合は都内で大地震が起きると、クリーニング業者が火元となる懸念があります。東京都では違法業者が合法業者より多いなど、業界は遵法意識に乏しいところがありました。率直に言って、こういう業者は『新型コロナによって淘汰されたほうが業界の健全化に寄与するのに』と思うこともあります」(同・鈴木氏)

 あまり知られていないが、クリーニング業界は与党の“集票マシーン”として機能してきた歴史を持つ。鈴木氏は「これは業界の遵法意識が低いことと関係があるでしょう」と指摘する。

止まらない市場の縮小

「政治家の方も、行政の担当者も、よく『クリーニング業界は零細業者が多いので保護する必要がある』と決まり事のように言います。70年代以前ならそれでよかったのでしょうが、今は大手の寡占化が進んでいます。私の会社でも店舗は47軒、工場は3つあります。クリーニング業法は1950年、つまり昭和25年に制定されたもので、もう時代に即していません。業界団体である全国クリーニング生活衛生同業組合連合会も“守旧派”の弊害が出ています。与党である自民党は法律を改正し、業界を保護するより、労働基準法などに違反したクリーニング店をしっかりと摘発し、適法化を促すよう転換すべき時代が来たと思います」(同)

 2018年4月、東京商工リサーチは大阪のネクタイ・かばん業者が倒産したと伝えた。クールビスの浸透で、ネクタイ需要が大幅に減少してしまったのが原因だった。

 今年7月には、ボタンダウンのワイシャツを開発したことで知られるアメリカの衣料老舗、ブルックス・ブラザーズが経営破綻したと話題になった。

 もともとビジネスマンのカジュアル志向でスーツの需要減に悩んでいたところ、新型コロナが引導を渡した形だ。

 クリーニング業界にとって、こうした衣料業界の動きは他人事ではない。たとえ新型コロナのワクチンが開発されたとしても、市場の縮小が止まるわけではない。少子高齢化も格差社会も依然として進展している。

 鈴木氏が「クリーニング業者の数は、新型コロナの感染状況とは無関係に、今後も減少する。だからこそ生き残った業者は徹底した遵法意識を持つことが重要」と主張するのは、こうしたことが背景にある。

週刊新潮WEB取材班

2020年8月5日掲載

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