コロナ禍で売上激減「クリーニング業界」の惨状 悪徳業者は淘汰される可能性

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格差社会も逆風

 ところが今年は4月7日に、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言が発令された。多くの消費者はクリーニング店に向かうことを「不要不急」の行動と判断、コートやセーターはタンスに収納されたままとなった。

「5月25日に全都道府県の緊急事態宣言は解除となり、その直後は客足が戻りました。しかし4月からの落ち込みをカバーするには至りませんでした。冬物の持ち込みが完全復活とはならず、テレワークの普及でスーツやワイシャツが落ち込んでしまい、売上の回復を妨げたのです。特にワイシャツは重要な商品です。本社が福島県須賀川市という私の会社でも、月の売上でワイシャツは3割を占めます。これが首都圏の店舗となれば、5~6割は当たり前です。テレワークがクリーニング業界に与えた影響は、相当なものがありました」(同・鈴木氏)

 現在、日本全国のクリーニング店は約9万店。そのうち、約2万4000店が工場や作業場を持つ店舗であり、約6万6000店がクリーニングの受付だけを行っている店舗という内訳だ。

「この10年間で、4万店が閉店に追い込まれました。高度成長期から最近まで、日本は世界でも類を見ない“クリーニング店大国”でした。清潔な日本人はクリーニングの需用が旺盛です。綺麗な軟水が簡単に入手できますし、機械化の進展で庶民でも気軽に利用できる低価格が実現できました」(同)

求められる政策の“転換”

 だが、日本社会は少子高齢化に直面。高齢化した顧客はクリーニング店から遠ざかり、若者人口の減少も加わって市場規模の縮小。またクリーニング業界でも、経営者の高齢化で店や会社を畳むケースが増えている。

「格差社会が進行したことも、私たちにとっては逆風でした。かつては1億総中流だったからこそ、皆さんが気軽に衣服をクリーニング店へ持ってきてくれました。収入が減れば、皆さん真っ先にクリーニング費用をカットするのは当たり前です。少子高齢化とデフレ化に象徴されますが、この10年はクリーニング業界にとって非常に厳しいものがありましたが、それに新型コロナが非常に強い追い打ちをかけたということになります」(同)

 一方、2015年ごろから新設のコインランドリーが目立つようになってきた。昭和の時代は銭湯に隣接する単身者向けの店舗が多かったが、近年はファミリー需用を意識し、住宅地や郊外に大型洗濯機や乾燥機を用意した広い店が多い。

 素人は「コインランドリーがクリーニング店を駆逐しているのでは?」と考えてしまうが、鈴木氏は「事態は逆です」と解説する。

「コインランドリーは人気なので、現在は投資の対象となっています。コンサルティング業者が資金を準備し、開業に適した区画に店舗を建設するのですが、その運営をクリーニング店に依頼するビジネスが出てきました。コインランドリーは、毎日の掃除や集金、機械のメンテが必要ですが、それをクリーニング店の店員に任せるやり方です。コインランドリーは経費がかかるので投資家がお金を出し、クリーニング業者が管理費を得る“Win-Win”のノウハウです」

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