メディアの“危機扇動”にうんざり(中川淳一郎)

国内 社会 週刊新潮 2020年7月30日号掲載

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 メディアが盛んに問題視したことって、後になるとどーってことなくなりますよね。去年の今頃、「東京五輪は猛暑でヤバい!」みたいな話題をテレビはやりまくっていました。そして、小池百合子都知事が提唱した「かぶる傘」がダサ過ぎると取り上げたり、打ち水をしよう、という提案をバカにしたりしていました。確かに脱力する対策ばかりでしたが。

 そしてあれから1年、五輪は延期になり、さらに、通常7月は30度超えが続くのに、今年は割と涼しい日が多くて快適です。去年の今ごろ、メディアが取り上げていたのは、もっぱら「猛暑」とカヌーやトライアスロン関連の「水質汚染」ばかりでした。

 多分、水質について組織委はなんとかしたと思いますし、今年だったら意外と快適な五輪になったかもしれません。誰もが結果は予想できないわけで、仕方ありませんが、「過度に煽らないでくれない?」と本気で思います。

 恐らく、これからの五輪に関する「大変です!」報道は猛暑と水質汚染はどうでもよく、感染症対策がメインになることでしょう。

 あと、テレビは築地市場の豊洲移転を前に、建設地の残留有害物質問題をしきりと報じていました。移転2年前の2017年には「盛り土」問題も連日のように報じた。この問題ってどこに行ったの? 解決した、という報道はないのに、豊洲市場は普通に営業していて、今やコロナの話題ばかり。

 そもそも、これまでにもなんらかのでっかい変化が起こったりイベントがあったりすると「ヤバいです!報道」ってものは出続けました。2004年のギリシャ・アテネ五輪と2016年のブラジル・リオ五輪の時は、「呑気な国民性の労働者がぐーたらしていて施設の建設が開催に間に合わないかもしれない」でした。

 2002年の日韓ワールドカップの時は「イングランドからフーリガンが大量に押し寄せて日本国内で暴れまくる」でした。そして「最も危険なのは埼玉スタジアムのイングランドvsスウェーデン」だと煽られました。えぇ、私はその試合観に行きましたが、本当に平和的で楽しかったですよ。

 なんでメディア(特にテレビ)は危機感を煽り続けるんですかね? 最近、私は朝7時台のNHKのニュースを見終えたらテレビを消すようにしています。どのチャンネルも深刻そうに暗い話ばかりしている。当初、私は「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)に出演する白鴎大学の感染症の専門家・岡田晴恵さんに対して「他の専門家とは違ってまどろっこしくなく、選択的提示をしてくれ、半断定的に言ってくれる」と好意的に当コラムで書いていました。

 でも、彼女と番組コメンテーターの玉川徹さんの発言がたまらなくイヤになってしまったんですよ。とにかく2人とも常に政府・自治体に文句を言い、遊びまくる“愚民”を嘆くだけ。私はコロナについては「この世にある仕方ないもの」的に捉えるようにしたため、危機感を煽る報道はスルーすることにしています。

 誰がこの「危機を煽ろうぜ!」という方針決めるの? むしろお前の頭の悪さを嘆けよ、と思いますが。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。