朝日「軍艦島の徴用工」社説に疑義あり 女性センター長が質問状を出した根拠

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朝日新聞の偏向!?

 三菱マテリアルからは7月13日付の「事実関係の回答書」が送付された。文書で《弊社が国内裁判で被告となっている事例はございません》と答えたのだ。

 加藤センター長は、朝日新聞の端島炭鉱=軍艦島に対する報道姿勢に“偏向”があるのではないかと気になっている。

 なぜ、そのような疑問が浮かんだのかといえば、朝日新聞の電子版に5月30日、「『4密』の炭鉱の島、遺体は酒樽で…コレラ大流行の教訓」という記事が掲載されたからだ。

 内容自体は問題がない。長崎県の近代史に詳しい建築家のインタビュー記事で、県内の炭鉱における感染症対策の歴史を紹介し、新型コロナ禍に悩む我々の“処方箋”を探ろうという内容だ。

 記事が紹介するのは、1885(明治18)年、長崎県の高島炭鉱でコレラが猖獗(しょうけつ)を極め、ひと夏で80人を超える作業員が死亡してしまったという事実だ。

 出炭量の減少に直面し、三菱は感染症対策と“働き方改革”に乗り出す。職場と住居の衛生環境を改善し、直接雇用に切り替えることで労働者の待遇を改善した。

 こうして得られた貴重な教訓を踏まえて三菱は、端島炭鉱=軍艦島では最初から労働環境に配慮して開発が行われた。

日本政府を批判する証言も収録

 かつて炭鉱労働者はタコ部屋という劣悪な環境で寝起きしていたが、端島では鉄筋コンクリートの高層アパートが用意された。

 むしろ端島を評価しているとも読める記事なのだが、加藤センター長は問題点を指摘する。

「電子版では見出しの下に、端島の大きな写真が使われています。コレラや天然痘で亡くなった炭鉱労働者の《遺体を「酒樽(さかだる)に入れて焼き捨てた」とする資料も見られます》との一文に、『端島でそんなことがあったなんて初耳だ』と驚きました。ところが、よく読んでみると、高島炭鉱の話なのです。朝日新聞が7月9日に掲載した『世界遺産対立 負の歴史見つめてこそ』の社説を読んだ後で、改めて振り返ってみると、どうしても朝日新聞は端島炭鉱に悪いイメージを持たせたいのではないかと思ってしまいます」

 今、加藤センター長に対する取材依頼は、大半が日韓の“左翼的”メディアと市民団体だという。朝日新聞の社説に続き、韓国のハンギョレ新聞(電子版)によると7月17日、韓国と日本の64の市民団体が「産業遺産情報センターの強制労働否定の展示を中止せよ」との共同声明を発表している。

「ある社は、1社で複数名、1人の記者の方が取材をしたら、また別の日に別の記者の方がと、延々と取材を申請されています。取材拒否をする訳にはいきませんから応じますが、率直に言って、申し合わせたような質問が多く、徒労感を覚えることもあります」

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