3歳女児放置死、逮捕母も虐待被害 17年前の流血事件を児相元職員が語る

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 3歳の娘を死に追いやった梯沙希(かけはしさき)容疑者(24)は、自身も凄絶な虐待の被害者だった。なぜ彼女は「悲劇の連鎖」を断ち切れなかったのか。

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“母親”は、娘の2歳の誕生日を祝う写真にこんな言葉を添えていた。

〈最近少し大きくなったなーって実感するときあるw/まだまだおチビで可愛いのんちゃん 産まれてきてくれてありがとう だいすきや 今日はおめでとう〉

 梯沙希容疑者のインスタグラムには、限られた友人しか閲覧できない“裏アカウント”があり、そこには笑顔溢れる娘とのツーショット写真が大量に投稿されていた。ある時はディズニーランドを満喫し、またある時は「スタジオアリス」で記念撮影に……。仲睦まじい母娘の様子を見る限り、“悲劇”を想像することは難しい。だが、くりくりとした瞳が愛らしい“のんちゃん”こと、稀華(のあ)ちゃん(3)の笑顔を目にする機会は、永遠に失われてしまった。

 警視庁捜査1課が、沙希容疑者を保護責任者遺棄致死容疑で逮捕したのは7月7日。〈おチビで可愛いのんちゃん〉を自宅アパートに放置して、餓死に追いやった疑いが持たれている。

 警視庁担当記者が事件の経緯を振り返る。

「梯はシングルマザーで、JR品川駅に近い居酒屋チェーンで働いていました。そして、店の元同僚で交際相手の男性に会うため、6月5日から13日にかけて鹿児島を訪れている。稀華ちゃんはその8日間、大田区蒲田にある自宅アパートの居間に閉じ込められていた。梯は13日に帰宅したものの、娘が息をしていないことに気づいて自ら119番通報したのです」

 稀華ちゃんは心肺停止状態で救急搬送。まもなく死亡が確認された。警察から任意の事情聴取を受けた沙希容疑者は、身柄を解放された直後に自殺を図っている。

「リストカットでした。傷は深くなかったものの、ヤケを起こさないように警視庁は梯を入院させた。結局、退院と同日の今月7日に彼女は逮捕されました」(同)

 沙希容疑者はその後の取調べで、〈居間のドアをソファで塞いで台所に出られないようにした。包丁に触ったら危ないと思った〉〈お茶やお菓子をいっぱい置いていったので死ぬとは思わなかった〉〈もう少し早く帰るつもりだったが、飛行機が取れなかった〉などと供述している。しかし、

「彼女の話は矛盾だらけ。6月上旬は飛行機にも空席があった。また、携帯の履歴から鹿児島の交際男性とのやり取りを削除する“隠蔽工作”も。5月にも3日間、稀華ちゃんを置き去りにして鹿児島を訪れているが、その時に娘が無事だったことで味を占めたのではないか。警視庁はネグレクトが常態化していたとみて捜査を進めています」(先の記者)

 宮崎県出身の沙希容疑者は、地元の県立高校を卒業後に「羽田空港内の飲食店に内定をもらって上京したと聞きましたが、1年で辞めたみたい」(高校の同級生)。

 それと同じ頃に結婚し、2016年11月に長女の稀華ちゃんを出産するのだが、「夫のDVが原因ですぐに離婚したようだ」(先の記者)。母娘は17年7月から蒲田のアパートでふたり暮らしを始め、そこが悲惨な事件の現場となった。

 一昨年に、このアパートを訪れた知人男性が言う。

「その日はインスタを通じて知り合った友達数人が彼女の家に集まったんです。沙希はようやくひとりで座れるようになったくらいの子どもをあやしながら喋っていました。“シングルは大変だね”って言うと、“そうでもないよぉ”。子どもを可愛がってたのは確かですけど、玄関には男物のアディダスのスニーカーがあったから、彼氏はいるんだろうな、と。インスタの交友範囲も広くて“ぎゃるる”という出会い系アプリもやっていた。口癖は“あそびたーい”と“しあわせになりたーい”でしたね」

〈幼い娘を餓死させた鬼畜母〉〈男に狂って娘を放置したクズ親〉

 彼女の行状からすれば、ネット上に氾濫する罵詈雑言もやむを得まい。

 母親が交際相手との逢瀬を愉しんでいる最中、稀華ちゃんは6畳の居間に“監禁”され、空の菓子袋とペットボトルが散乱するゴミ溜めのような密室で孤独と絶望、空腹に苛まれながら息を引き取った。

 命を落とした女児の身体にあざや傷は見つかっていないが、胃のなかは空っぽ。極度の脱水症状と飢餓が死因となった。もはやネグレクトの域を超え、“虐待”と呼ぶべき事態だろう。その間、娘はどれだけ「ママ!」と悲痛な思いで叫び、泣き続けたことだろう。

 ただ、この事件を論じるには、もうひとつ考慮すべき要素がある。

 先の知人男性が続ける。

「気になったのは、隣に座った人が頭を掻いたり、立ち上がろうとするたびに彼女がビクッと体を強張(こわば)らせること。いま考えると、DVとか虐待の被害者に多い反応みたいですけど」

 元夫によるDVの詳細は不明だが、沙希容疑者がいつ命を落としてもおかしくないほど凄絶な虐待の“被害者”だったことは事実だ。

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