新型コロナはピークアウトしている? ウイルス学権威が説く「必要な予防策はこれだけ」

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自殺者が8千人

 信州大学特任准教授で法学博士の山口真由さんは、

「第1波の際、自粛や休業要請もふくめた対策にどれだけ意味があったのか、しっかり分析したうえで、もう一度やる意味があるのか精査してほしい。たとえば、マスクをして話せば大丈夫な行為や場所を指定してもらえれば、営業できる場所も広がるし、“マスクだけはしてください”と言われれば守りやすいです」

 と提案する。だが、そんな検証が行われる前に、国民は「第2波パニック」に陥っている。6日発表のJNNの世論調査では、「緊急事態宣言を再び発表する状況ではない」という政府の認識を、「支持する」が44%で、「支持しない」は48%だった。都内の感染者100人超という数字と、それを煽るテレビに突き動かされ、あの暗黒を再び、と考える人が多数派になってしまったのである。

 だが、先述の通り、いまの感染拡大はすでにピークアウトしている可能性が高い。さらに、宮沢准教授はこんな仮説を披露する。

「新型コロナ関連ウイルスは、中国のキクガシラコウモリから見つかっていますが、国内の同種の保有状況は調べられていません。ただ、国内のユビナガコウモリからは、新型コロナと同じベータコロナウイルス属のウイルスが見つかっているので、国内のキクガシラコウモリも、新型コロナ関連ウイルスを保有している可能性は十分ある。コウモリとの長い共存関係のなかで、感染を重ねてきた結果、日本人にはある種の耐性があるのかもしれません」

 その当否は措くにしても、われわれはいたずらに怖れて、過去の轍を踏んではいけない。国際政治学者の三浦瑠麗さんが言う。

「新型コロナの脅威が強調されてきた一方、緊急事態宣言を再度出すことの怖さが、まだ理解されていません。帝国データバンクの調査にもとづく試算では、2カ月にわたった緊急事態宣言の結果、8月までに失業率が2ポイント上がる。それだけで今年の自殺者が8千人増えると見込まれ、感染症の犠牲者をはるかに上回ります。加えて個人消費の落ち込み。韓国では自粛期間中の消費欲を満たそうと、反動で消費が増えましたが、日本では6月に営業再開した百貨店の売り上げが、前年同月比で22・8%減。これだと今年のGDPは、第2波が来なくてもマイナス12%成長になる。また、本来は現役層が経済を回し、高齢者の防護に対策を集中させるべきですが、彼らがまったく歩かなければ総合的な意味で寿命が縮まってしまう。そういうことも考え比較考量すべきです」

 比較考量が可能な落ち着きと視野が必要なのだろう。そうなれば、五輪についても宮沢准教授のように、

「できると思う。感染者ゼロを目指したりしなければ、検査やマスク着用など、いろいろなアイディアや対策が出てくるでしょう」

 という考えを抱くこともできるだろう。

 さて、6日には専門家会議に代わる新たな分科会の初会合も開かれたが、はたして国民の前に広い視界を開いてくれるのだろうか。

「西村康稔経済再生相は、知事の枠に鳥取県の平井伸治知事を選んだ。第1波の検証に前向きな大阪府の吉村洋文知事が選ばれなかったのも、大都市とは財源も人口も感染状況も異なる地方の声を反映させる、という趣旨だから。平井さんはドライブスルーのPCR検査をはじめ、独自の取り組みで評価されたので」(旧専門家会議の関係者)

 わずかな感染者しか出ていない県の発想で、ゼロリスクを求める神経質な対策が打ち出されたりしなければよいのだが。

週刊新潮 2020年7月16日号掲載

特集「『ホスト感染者』増産の裏に『10万円』のエサ! 『第2波パニック』の作られ方」より

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