森本特捜部長交代で津検事正へ…名古屋大卒では初の検事総長へまっしぐら

国内 社会 2020年7月14日掲載

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政官財の面々を逮捕

 2017年9月の就任から2年11カ月。プレッシャーも強く長くても2年というポストに座り続けた東京地検特捜部の森本宏特捜部長(52)が三重・津地検に異動する。7月31日付け。名古屋大卒では初の検事総長へまっしぐらという森本部長の実績と経歴を改めておさらいする。

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 森本特捜部が手掛けた事件をざっと振り返ってみると、リニア中央新幹線の建設工事を巡って大手ゼネコン4社が関与したとされる「談合」、スパコン開発者を逮捕した「助成金詐欺」、文部科学省の次期次官らを次々と逮捕した「文科省汚職」、日産自動車のカルロス・ゴーン前会長らを逮捕した「特別背任」、秋元司・衆院議員を逮捕した「IR汚職」、そして、河井克行前法相と妻の案里・参議院議員を逮捕した「公職選挙法違反」……。

「2009年の郵便不正事件に関する捜査で、大阪地検特捜部のエース検事が証拠のフロッピーディスクを改ざんした件で特捜部長らが逮捕されたり、2011年の陸山会事件に絡む捜査では、東京地検特捜部の検事が取り調べにないやり取りを報告書にまとめていたことが明らかになったりしました。この後しばらく特捜検察は、そのキズを癒すので精いっぱいでした。独自捜査は事実上封じられ、巨悪を眠らせないという世間からの期待に応えられる環境ではまったくなかった。そのカベを突破してくれるのではないかという希望の星が森本さんで、実際そのようになったと思います」

 と、検察関係者。

「河井夫妻はオマケみたいなもので森本特捜部が狙っていたものではないですが、政官財の面々を逮捕・起訴した実績は、法務検察内で大変評価されています。財界トップがゴーンですからね。特捜部が元気な1990年~2000年代に一線で活躍していた検察OBは、“事件を手掛ければそれだけ情報提供があって、そういった情報をさばくだけでも仕事が回っていた”と言っていました。それほどではないにしても森本さんのところには色んな天の声、下々の声が集まっていたにちがいない」

「特捜部長になる前から、事件に精通する『現場派』としても国会対応などを担当する『赤レンガ派』としても一目置かれ、検事総長候補と言われてきました。まっしぐらというところじゃないですか」

 森本部長は司法修習44期。名古屋大卒で、検察トップになれば同大からは初だ。ちなみに、特捜部のヒラ検事時代のこんな逸話を、別の検察関係者が語る。

「福島県知事(当時)の収賄事件で、知事の実弟を取り調べたときのこと。“知事は日本にとってよろしくない。抹殺する”と実弟に凄む“狂気”も垣間見せました。強気の捜査で鳴らして“特捜のエース”となった一方で、法務官僚からの評価も高い」

「法務省の刑事局総務課長といった重要ポストも経験し、エリートとしてのバランス感覚もある。捜査と法務行政双方に精通した稀有な存在ですね。今年の2月には検事正として地方に出るはずでしたが、ゴーンと今回の河井案件があって、東京に残ったんでしょう。今月で退任する稲田総長とその後継の林真琴東京高検検事長はいずれも法務省人事課長を経験していて、森本さんにもやらせたかったようですが、年次の問題でこれはパスすることになりました」

「今回の津で1年ほど過ごした後、東京地検次席に戻ってくるはず。総長になるならば、この後に、法務省の官房長とか刑事局長、事務次官などを経てナンバー2の東京高検検事長にたどり着くのが通常コースですが、森本さんの場合は、そのまま東京高検や最高検などの検察側の決裁ラインを昇っていくことも考えられなくはないですね。とはいえ、それでも近年には例がなく、かなり異例のことですが……。賭けマージャン問題で辞任した黒川前検事長は政治との距離が近すぎると批判を浴びました。森本さんの出世ルートは、それがどんな風に捉えられるのかということとも関係すると思います」

 森本部長の後任として浮上しているのは、新河隆志氏(55)。司法修習46期で、法務省勤務が一度もない現場派だ。

「森本さんとは声の大きさから始まって対照的です。森本さんの声はときにパワハラと言われるほど大きかった。事案について強行突破も辞さない森本さんに対し、新河さんは調整型の人間。森本さんとしてはやりたい事件がまだまだあり、心残りだったようで、それは新特捜部に受け継がれるはずですから、“次に何をやるか”にすでに注目が集まっています」

週刊新潮WEB取材班