金正恩が80日ぶりに登場!でも解析ツールで判明した「10の加工痕」を解説

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粗い画像の理由とは?

 今年4月12日から明らかにおかしな動向を見せている、北朝鮮の指導者・金正恩。それが7月8日で80日目を過ぎ、「公式行事不在」という不名誉な記録を更新中だ。実はこの日は、金日成の死から26周年を迎える日でもあった。世間の関心は、金正恩が金日成の遺体が安置された錦繍山(クムスサン)太陽宮殿に参拝するか否かに集中していたのだが……。

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 結論から言えば金正恩らしき人物が参拝したことは報じられたが、その「報じられ方」そのものに違和感を抱かざるを得なかった。

 朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、金正恩が錦繍山記念宮を参拝したという記事を当日の午前7時頃にインターネットへ掲載。そこには“証拠写真”が1枚添付されていた。後述するが、普段なら、こういったニュースは行事の翌日に公開されてきたものなのに、である。

 北朝鮮は金日成の死亡日を「民族最大の追悼の日」として記念日と定めており、金正恩が出席する政治イベントだと宣伝していたが、過去と違い盛大な儀式は行われなかった。

 記事の中で特に目を引いたのは、「最高尊厳」と尊ぶ金正恩の参拝写真が、たかだか650×400ピクセルであり、画質が粗いこと。金正恩の映像や写真を撮影する者らを北朝鮮では「1号写真作家」呼ぶが、彼らは最高の写真技術だけでなく、最も高価な最新機種のみを使う。

 百歩譲ってインターネットにアップするとき、サーバー容量制限のため圧縮したと考えることが出来なくもないが、これはあり得ない。北朝鮮は労働新聞と海外宣伝サイトに自前のサーバーを使用しているものの、アクセス者は至極少数であるためサーバーダウンの心配はない。ではなぜ、金正恩の参拝写真を、敢えてこのようなレベルの写真でアップしたのだろうか?

 それはカメラやサーバー容量の問題ではなく、金正恩の写真や動画に意図的な操作が加えられた結果、それを隠ぺいするためだ。これまでの北朝鮮ならば、このような低解像度の映像を使用することは断じてない。代表的なのは、4月27日、9月19日の南北頂上会談や本人が新年の辞を行った映像で、これは、1920×1080ピクセルのFHDの画質でアップされている。

 しかし、4月以降はこのような写真や映像はアップされていない。今回の記事の画像も普通の人が見ると特に問題がないように見えるかもしれないが、専門ソフトウェアを使って検証した瞬間、これは何だろうという疑問と違和感が一気に膨らんでいった。

 例えば……

・金日成遺体参拝には、平年と比べて至極少数の23人だけ参拝しているのが確認できる。新型コロナの影響で随行員を意図的に減らしたともとれるが、金正恩が参拝せず、最側近だけ参加した場合、秘密が漏れる危険を抑えることができる。

・遺体参拝には金与正の姿も見えるが、最後列にいるのが不自然だ(*写真では確認しづらいかもしれないが、中央左に女性風の黒いスーツを纏った彼女が確認できる)。彼女は1年前の同じ行事では、兄と先頭に立ち、白頭血統であることをアピールしている。

・金正恩は、これまで着用していた金日成肖像バッジを身につけていない(他の参拝者はスーツ右ラペルにバッジをつけている。白い点として確認できるものがそれだ)。去年の画像を使えば加工に支障はなかったのではないかというツッコミがあるかもしれないが、それを使えなかったところに焦りなどがあって冷静な判断を下せなかったように映る。加えて、「1号写真作家」は毎年入れ替わり、データの保存自体が疑われるという有様だ。

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