「#検察庁法改正案に抗議」した芸能人たちは香港問題にどうコメントしたか

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「芸能人が政治的見解を表明することの是非」が直近で俎上に上がったのは、検察官の定年を延長する検察庁法改正案が通りそうになっていた、今年5月のことである。

 注目を集めたのは、あまりそういう問題と関係がなさそうに見えるタイプの芸能人までもがツイッター上で「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグでメッセージを拡散したからだろう。

 当時、「抗議します」側の芸能人として新聞に名前が取り上げられたのは、きゃりーぱみゅぱみゅ、小泉今日子、浅野忠信、宮本亜門、城田優、麻木久仁子、井浦新、秋元才加等々。特にきゃりーぱみゅぱみゅのインパクトが強かったようで、本人は不本意だったかもしれないが、代表格のように報じられていた。

 この件について新聞やテレビは「芸能人が政治的発言をすることを問題視すること自体がおかしい」という論調で一致していた。芸能人に限らず、いかなる人であっても政治的な意見を述べる自由は日本にはあるのだから当然だろう。共感を得られるかどうかを別にすれば、汚職で有罪になった政治家であっても発信する自由はあるのだ。

 一方で、こうした発信に違和感を唱える人の代表的な疑問の声は次のようなものだった。

「もちろんいいんだけど、他の政治問題、人権問題とかについても関心あるの? 中国の人権蹂躙とかには黙っているのでは??」

 こうした疑問を持つ人ならば、おそらく今、彼らの動向をチェックしているかもしれない。6月30日、「香港国家安全維持法」が成立し、ほぼ同時に施行されたのだ。

 これによって「一国二制度」によりある程度は保障されていた香港の自由は破壊されてしまう、というのは左右かかわらず一致した見方だろう。産経新聞は7月1日付の1面トップを黒ベタのデザインにして「香港は死んだ」と批判した。記事の締めくくりは「香港は暗黒時代に入った」である。

 普段は犬猿の仲に見える(ただし時折一緒に麻雀をする)朝日新聞も、「密告社会への不安、現実に」(7月1日・素粒子)と書いたのをはじめとして、法律の問題点などを詳しく伝えている。

 こうした懸念が杞憂ではないことは明らかで、法律の施行と同時に、現地ではデモ参加者らが次々逮捕されたと伝えられている。中国の横暴には、欧米はもちろん日本政府も強い遺憾の意を表している。超大国である中国が、国際世論を気にせずにここまで時代に逆行し、人権を踏みにじるような振る舞いをしているのだから当然だろう。それこそこの先、香港の人たちは「香港に自由を」と声をあげただけで取り締まられるかもしれないのだ。

 では、5月に声をあげた芸能人たちはこの件についてどういう見解を示しているのだろうか。6月末からのツイートを見る限り、きゃりーぱみゅぱみゅ、浅野忠信、宮本亜門、城田優、井浦新、秋元才加らは都知事選関連やコロナ関連のツイート、リツイートは目立つものの、香港についてはほぼスルー。

 一方で、5月末ではあるが、小泉今日子はツイッターでアムネスティの「香港の『国家安全法』を阻止しよう!」というオンライン署名を紹介したうえで、「署名しました」とツイートし、意思を表明している。また、検察庁法問題に限らず、政治的な問題を普段から熱心に発信しているラサール石井やウーマンラッシュアワーの村本大輔も、リツイートなどの形で香港について触れている。このあたりは一貫性を示したということかもしれない。

 もちろん検察に関心があるからといって、香港にも関心を持つ必要があるわけではない。「あの問題について触れた以上、この問題についても触れよ」というのは押しつけもいいところであって、それこそ言論の自由の原則に反する。

 しかし、香港には日本の芸能人を愛してくれる人も多くいるという。きゃりーぱみゅぱみゅは、かつて香港公演もしたほどだから縁も深いだろう。彼らを励ましてあげると喜ばれるかもしれないのだが……。

デイリー新潮編集部

2020年7月8日掲載

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