Jリーグ「柏VS.東京」のリモートマッチを実況中継 無観客のスタジアムに響いた声

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ポルトガル語も響くピッチ

 その他にも、フィールプレーヤーが味方DFに対し「ノーファウル」とか「サイドを変えろ」、フリーの味方がトラップする時は「ターン」という具合だ。

 今回の「リモートマッチ」で耳に聞こえたサッカー用語に、特別に目新しいものはなかった。

 野球はピッチャーとバッターが1対1で向かいあうが、サッカーはプレー中に「間」はほとんどない。

 一瞬で状況が変わり、そうした変化が連続して発生する。野球と比べると、サッカー選手の指示は簡潔だが、それが理にかなっているのだろう。

 面白かったのは、意図的な反則を犯して笛を吹かれた選手は、「ホイッスルはないでしょ」と主審に言葉や態度で不満を表しても、覚悟していただけにリアクションも1テンポ遅れる。

 しかし正当なタックと思って笛を吹かれると、当人はもちろんチームメイトも「え~っ!」とすかさず反応することだ。ここらあたり、人間の心理がストレートに出るのだろう。

 また0-1とリードされた柏のネルシーニョ監督[本名:ネルソン・バプティスタ・ジュニオール](69)が、試合終盤にテクニカルエリアで身振り手振りを交えて盛んに指示を出していた。

 ポルトガル語のため何を言っているのかわからなかったが、果たして選手に伝わっていたのだろうか。

 そして試合が後半4分のアディショナルタイムに入り、そろそろタイムアップになりそうだと、リードしているFC東京の選手は「笛、笛」と主審に試合終了のホイッスルをアピールする。押し込まれていただけに、彼らの気持ちもよくわかる。

 かくして再開初戦は、アウェーのFC東京が、右CKからCB渡辺剛(23)の上げた1点を守りきり、1-0で逃げ切って開幕2連勝を飾った。

 試合についてもう少し触れておくと、柏は主力FWクリスティアーノ・ダ・シウヴァ(33)を、FC東京も快足FW永井謙佑(31)と日本代表MF橋本拳人(26)をベンチ外とした。

 ケガなのかコンディションが万全ではないのかわからないが、柏は今シーズン新加入のMF戸嶋祥郎(24)、神谷優太(23)、仲間隼斗(28)の3人を交代出場で起用した。戸嶋と仲間はJ1リーグのデビュー戦でもあった。

 対するFC東京の長谷川健太監督(54)も、大卒ルーキーのボランチ安部柊斗(22)をスタメン起用し、ドリブラーの紺野和也(22)を試合終盤にピッチに送り出した。

 4日に再開されたJ1リーグは、過密日程のため8日、11日または12日と3連戦だ。両監督はそれを念頭に、勝利を目指しながらも主力を休ませつつ、選手層の底上げを図るための交代策だったのか。こちらは今後の選手起用を見ていけば、指揮官の狙いも明らかになるだろう。

開催可否を決めるのは知事

 気がかりなのは、連日東京での新型コロナウイルスの感染者が100人を越えていることだ。

 3連勝を飾ったJ2大宮の高木琢也監督(52)は「この先、また感染が広がって中断する可能性もゼロではない。今シーズンは何があるかわからないと感じている」と話していたように、今後も感染者が増加すれば、いつ中断されるかわからない。

 Jリーグの開催可否を決めるのは、各地域の首長の判断に委ねられている。5日の都知事選で再選された小池百合子都知事(67)が、どのようなスタンスでJリーグと接するのか。今後も予断を許さないコロナ禍に見舞われたJリーグである。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月8日掲載

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