コロナで困窮「北朝鮮」で次に起こること 中国進駐、大量の難民が日本海へ

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「殺人も厭わない」

 白頭山は抗日パルチザンだった金日成が山籠もりをして戦い、息子の正日が生まれたとされる聖地。ゆえに、金ファミリーは「白頭山の血脈」を重視する。その血統が途絶えるということは、軍のクーデターなど、内乱が勃発することを意味している。

「金体制崩壊なら、中国が介入してくるでしょう」

 とは、元自衛官で軍事ジャーナリストの宮田敦司氏。

「まずは北朝鮮からの難民が流入しないよう、人民解放軍が中朝国境に集結して封鎖しますが、混乱が落ち着けば、平壌に軍事顧問として少数ながら進駐する可能性もある。中国の傀儡、親中政権を樹立させるための工作を行うでしょう」

 そうなれば、火の粉を被ることになるかもしれないのは、海を挟んで半島と対峙する我が国なのである。

「内乱が起きれば、金体制の下で人民を取り締まってきた秘密警察などが、住民からの迫害を逃れるため難民として日本に逃れてくる可能性が高い。収容所などで殺人も厭わないような残忍な連中なので、韓国に亡命しても厳しい取り調べを受けるかもしれませんからね。彼らは立場上、高性能の船を使えるでしょうから、容易に日本海沿岸に漂着してくるでしょう」(同)

 勿論、秘密警察の残党は難民に紛れてやってくる。北朝鮮の人口は約2500万人だが、仮に0・1%が日本を目指してもその数は2万5千人。日本政府は数万人規模の難民と、その中にいるならず者の相手をしなければいけない。

 さらに憂慮すべきは、北の「核」である。米朝交渉が決裂した元凶の核兵器。現在は正恩氏が核のボタンを握るが、最高指導者が欠けて内乱となれば、隣国で仮想敵国である日本にとって脅威は増すばかりだ。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏によれば、

「北の恐ろしいところは、核保有国なのに国の体制が不安定なところに尽きます。内乱となれば核を管理下に置くためにも、隣国の中国は、アメリカをはじめ利害のある各国と協議をして介入することになるでしょう。他方で、7月には北の夏季軍事演習が行われ、8月には米韓合同軍事演習が行われる可能性もある。対する北朝鮮は、実戦配備が近いといわれる潜水艦搭載型の弾道ミサイル(SLBM)を撃ってくる可能性もあります」

 イージス・アショアの導入撤回で、防空体制の整備が急がれる日本にとっては不安が尽きない。

「SLBMは、潜水艦に搭載されているのでレーダーの捕捉に引っかからない。日本海に沈んで隠れられたら発見が難しいため、存在自体が脅威です。飛距離は2千キロ前後しかないので、北が混乱に乗じて、アメリカに届かないなら日本に撃ってしまえ、となる可能性が排除できないのが恐ろしいところです」(同)

 確かに身の安全が約束されず金王朝が崩壊寸前となれば、ファミリーが自暴自棄になる恐れはないとは誰も言えまい。微笑みの仮面を脱ぎ去った冷徹なお姫様が、「核のボタン」に手をつけない保証など何処にもないのだ。

週刊新潮 2020年7月2日号掲載

特集「北朝鮮暴発で日本に火の粉」より

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