泉佐野市はふるさと納税訴訟で国に逆転勝訴 ポイントは「法の遡及(そきゅう)」
事後に作った条例、制度などの法律を制定前の事件に適用して裁く。これではなんでも恣意的に懲罰を科すことができてしまう。世の中、収拾がつかないどころか、刑事裁判などでは恐ろしいことにもなる。「法の遡及(そきゅう・時間をさかのぼること)」による事後法適用の禁止は、法治国家の基本でもある。この基本を守らなかった国が最高裁からNOを突き付けられた。
6月30日午後、最高裁の西門で雨の中、待ち受ける報道陣の前に現れた阿部泰隆弁護士(兵庫弁護士会)が「勝訴」の垂れ幕を示した。代理人を務める大阪府泉佐野市が総務省に逆転勝訴したのだ。争点は「ふるさと納税」だった。
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返礼にアマゾンのギフト券 全国の寄付金の一割を手に
故郷の自治体などに寄付をして返礼に地場産品などがもらえる「ふるさと納税制度」は2008年に始まった。しかし泉佐野市は過熱し、ビールや、三陸海岸のカツオ、鹿児島のウナギ、高級肉など返礼品はどんどん豪華になってゆく。地場産品ではない返礼品どころか、アマゾンのギフト券なども使うなどして寄付金はうなぎのぼりに集まる。
2017年度には135億円と全国トップの寄付金を集め、2018年度には寄付額は497億円に上った。これはこの年度の全国の自治体のふるさと納税寄付額の一割にもおよび、人口たった10万人の小都市は突然、ウハウハ状態になったが、返礼率は7割に及び全国の自治体が過度な返礼品を贈る過当競争も招いた。
泉佐野市は問題視され、総務省は2018年9月に当時の野田聖子総務相が「一部の突出した人たちの行動で本来目指していたふるさと納税の姿が失われる」と批判した。昨年4月、同省は「ふるさと納税制度」を対象とする指定自治体に制限することを6月から導入することに決め「返礼品は寄付額の3割程度で地場産品に限る」と規定した。
そして5月、泉佐野市をふるさと納税の対象自治体から除外、同時に和歌山県高野山町、静岡県小山町など3町も除外を決めたのだ。
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