受信料裁判でNHK敗訴 秘密兵器「イラネッチケー」を開発した筑波大准教授に聞く

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無理矢理の申し立て

――判決文には「原告が、どのような意図をもって本件テレビを設置したものであれ、現に本件テレビが被告(註:NHK)の放送を受信することのできる受信設備(註:テレビ)と認められない以上、放送受信契約締結義務を負うと認めることはできない」とある。至極当然のように思えるが、NHK側の主張は強引だったというのは、原告女性の代理人を務めた高池勝彦弁護士だ。

高池:原告のテレビではNHKが映らないからと、“民放が映るんだから、NHKを受信できるテレビに当たる”(「本件テレビが民間事業者による放送を受信することができる以上、被告の放送を受信することのできる受信設備に当たる」)とまで主張していました。もちろん、裁判官は「放送法は『協会の放送を受信できる受信設備』と明文で規定しているのであって、(中略)分離上採用できない解釈と言わざるを得ない」と言っています。まあ、NHKも大手の弁護士事務所に依頼して、実験もして、東大の先生にまで意見書を書いてもらっていますから、かなりお金をかけたようですよ。

――その裁判費用は、もちろん受信料からの支出である。NHKが毎年、公表する収支予算は実に大雑把なものだが、裁判費用も明らかにしてもらいたいものだ。再び、掛谷氏が語る。

掛谷:NHKが4月にスタートさせた同時ネット中継も今は無料ですが、いずれはネットでNHKを観ている人にも受信料を払えと言ってくるはずです。それでないと、今の規模の収入を維持できませんから。うちの学生にも「インターネットで十分」と、テレビを持っていない人は多いですからね。そうなれば受信料収入はどんどん減る一方です。元々、NHKの受信料は、全国で視聴できるよう、電波塔を建てるために徴収していました。一方、通信となると、通信事業者がインフラを整備してきました。にもかかわらず、ネットでNHKが見られるからと受信料を払えというのは、ありえない話です。これだけは絶対に許してはいけないと思っています。

――ところで、今回の報道では、国立の筑波大に変わった先生がいると思い人も多いはず。大学内での立場は大丈夫だろうか。

掛谷:Yahoo!のヘッドラインにも何度か名前が出たこともありますけど、立場的には……あんまり良くないです(笑)。ただまあ、もしこれで最高裁で勝てれば、社会にとって大きな貢献になると思います。こういうことをやる人も世の中には必要。みんながみんな私のようだと、困りますけど……。

――ところで先生は、NHKの受信料は?

掛谷:払ってますよ。BSの受信料も払っています。私、本当はNHKのBSだけ見たいんです。「ワールドニュース」ってあるんですけど、各国がどういう報道をしているか知るのに便利です。英語はともかく、中国語やドイツ語、韓国語など翻訳してくれるのはありがたい。でも、NHKはBSだけの契約を認めてくれません。そういう選択の自由もない。最高裁で勝てたら、地上波は「イラネッチケー」で見られないようにして、BSだけの契約にしようと考えています。

――それが最高裁で勝つまでの目標?

掛谷:実は他にやりたいことがあります。子供がいる貧困世帯に、NHKが映らないテレビを配りたいんです。いま、NHK受信料の免除は、ほとんどないと言っていい。生活保護世帯は免除となりますが、貧しくても金額を支払わされている人はたくさんいます。受信料はけっこうな負担ですからね。それが払えないために、テレビを置けなくなって、民放の「仮面ライダー」を見ることができない子供もいるんです。ホテルもNHKが映らないテレビを必要とするでしょう。部屋数分の受信料を取られていますからね。ホテルには有料でNHKが映らないテレビを売って、そのお金で貧困家庭には無料で配ってあげたいです。

週刊新潮WEB取材班

2020年7月1日掲載

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