金正恩の“健康不安説”が再燃 きっかけは労働新聞が使った“ある文言”

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沈黙を続ける金正恩

 いずれにしても一貫して透けて見えるのは、金正恩の発言が全く伝えられていないということだ。

 重村教授が注目するのは、「『非武装地帯に軍を進出させる』と警告した」というニュースだ。

 日本経済新聞(電子版)は6月16日、共同通信が配信した「非武装地帯への軍進出警告 北朝鮮『前線を要塞化』」の記事を掲載した。

《金与正党第1副部長は13日の談話で、北朝鮮・開城の南北共同連絡事務所を「跡形もなく」すると表明した上で「次の対敵行動の行使権は軍総参謀部に渡す」と述べていた》

 更にニューズウィーク日本版(電子版)は6月17日、ロイターが配信した「北朝鮮・金与正、韓国の特使派遣提案を拒否 非武装地帯への部隊展開を表明」の記事を掲載した。

《北朝鮮側はさらに、朝鮮人民軍(KPA)総参謀部の報道官が、南北の経済協力事業を実施してきた金剛山と開城に部隊を展開すると表明。また非武装地帯から撤去した監視所を再び設置するほか、脱北者団体が頻繁にビラ散布を行っている西部の境界付近の砲兵部隊を増強し、警戒態勢を「最高レベルの戦闘任務」に引き上げると述べた》

 重村教授は、この2つのニュースからも、金正恩の体調が思わしくない可能性が読み取れるという。

「北朝鮮は独裁国家ですが、共産・社会主義の国だけあって、その国家統治システムは“官僚制の権化”という側面があります。要するに序列とか役職、担当できる仕事の範囲に関して非常にうるさい。そして北朝鮮で現在、軍の最高指揮官は金正恩氏です。ところが与正氏は『次の対敵行動の行使権は軍総参謀部に渡す』と発言した。これは通常ならあり得ないことで、とんでもない越権行為です。おまけに、それを受けて参謀部の報道官が『金剛山と開城に部隊を展開する』と言及するのも異例です。重要性から考えて、報道官レベルが発表できる内容ではありません。参謀部の幹部、軍幕僚レベルが実名で発表するのが普通です。北朝鮮の公的な発言が、これほど序列や役職を無視して行われていることを合理的に説明するためには、やはりトップである金正恩氏の健康問題に疑問を投げかけざるを得ないのです」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年6月19日掲載

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