コロナで認知度急上昇のPITTAマスク 国内生産で品薄回避、豊富なカラバリで人気に

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 コロナ禍によってマスク着用が必須になった今、ガーゼでも不織布でもない一風変わったマスクを街中で見かけることはないだろうか。「つるん」としたフォルムのアレである。マスク需要増を追い風に、もっとも認知度を高めたのがこちらのPITTA(ピッタ)マスクかもしれない。反響について製造会社に聞いた。

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 PITTAマスクを製造・販売するのは、愛知県名古屋市に本社を置く株式会社アラクスである。同社は、2013年からPITTAを販売しているという。

「花粉症患者の約80%が『不織布マスクでは花粉対策が不十分』と感じているというデータがありました。マスクを着用しても頬や鼻の脇、あごの隙間から花粉が入り、鼻水やくしゃみ等の症状が出てしまうというのです。それを解決するために、顔の形にぴったりと密着するマスクを開発しようと考えました」(アラクス企画部・堀田茂輝さん)

 フィット感を実現するべく協業企業と研究を重ねた結果、たどり着いたのがポリウレタンという素材だ。柔らかく伸縮性があり、化粧品のパフなどに幅広く使用されている。PITTAマスクの登場以前、農業用でポリウレタン素材を用いたマスクは存在したが、一般に向けては全く作られてはいなかった。

 ポリウレタンマスクの最大の特長は、「花粉カット率の高さ」と「通気性の良さ」だ。ポリウレタン素材に細かい穴をあける際に「ポーラスフィルター技術」という特殊技術を用いることで、花粉サイズの微粒子をキャッチするのに最適な大きさ・密度のセルを作ることに成功。さらに、立体網目構造にすることで花粉を99%カットするフィルターを作り上げた。また、通気性を妨げるセル膜を完全に除去し、他のポリウレタン素材では得られない通気性の良さも叶えた。柔らかく伸縮性があるので、着用時に耳が痛くなりにくいというメリットもある。

 3回までなら洗って繰り返し使えるという経済性も、毎日マスクを付けなければならないこのご時世ではありがたい。PITTAマスクは3枚入りでメーカー希望小売価格521円(税込)。3回洗えるということは、1枚あたり4回使えるので、4回×3枚=12回分(1袋)、521円÷12回=約43円で、1回分あたりの価格は約43円という計算になる。マスク価格の高騰は落ち着いてきたとはいえ、いまだ手に入りづらい状況が続いている昨今、繰り返し使えるマスクは重宝するだろう。

 コロナ禍でPITTAマスクに注目が集まった理由のひとつが、「マスクが品薄状態の中でも比較的在庫があったから」だ。なぜ安定的に供給し続けることができたのか。

「製造を中国に頼っている不織布マスクと違い、PITTAマスクは全て国内で生産しており、それが品薄状態を回避できた大きな要因だと思います。海外にはポーラスフィルターの加工技術がないのでやむなく国内生産に限っていたわけですが、結果的にこのコロナ禍での安定供給につながったというわけです」(堀田さん)

コロナ禍で売り上げ140%増

 PITTAマスクは海外でも使われている。一番多い輸出先は中国だ。「外国に行ってもPITTAマスクを使い続けたい」という中国人客の要望に応え、アメリカのチャイナタウンでも販売しているという。

 世界で使用されるPITTAマスクは、新型コロナウイルスによる需要の急増で2019年度の売上は前年比140%を記録した。だが、実はPITTAマスクはあくまで花粉対策用。花粉の粒子は3マイクロメートルなのに対し、ウイルスは0.02~0.1マイクロメートルであるため、PITTAのフィルターをすり抜けてしまうことになる。そのため、アラクスではウイルス対策用にN95規格相当の特殊帯電フィルターを採用した「PITTA MASK2.5a」の使用を推奨している。なお、こちらの見た目は一般的な不織布マスクと大きく変わらない。

 多くの人が花粉用PITTAマスクをコロナ対策として使っていることを、メーカーとしてはどう感じているのか。

「マスク不足だったので、みなさん『マスク』と名のつく商品ならあまり深く気にせずお使い頂いている……というのが実情なのではないでしょうか。ただ、飛沫拡散防止や顔に手で触れてしまうことを防ぐといった効果はありますし、一般的な不織布マスクでもウイルスの空気感染は防げないという報道もありますからね」(堀田さん)

 マスク事情に詳しい流通アナリストの渡辺広明氏は、PITTAマスクを次のように評する。

「洗える回数は3回までとのことですが、何度でも洗える布マスクが浸透しています。ウイルスを防げる高品質の不織布マスクが流通に乗り始めたことも考えると、一見、PITTAマスクにそこまでの優位性はないように思います。ただPITTAマスクには、その『ファッション性』で根強い支持があるように見受けられます」

 そう、PITTAマスクの最大のポイントは、豊富なカラー展開にある。13年の販売当初は白だけだったが、カラーバリエーションを増やしたことで、18年頃から売り上げが100倍近く伸びた。現在では、グレーなどオフィス向けの色から、ピンクや黄色、青、緑などファッション性の高いカラーまで全14色を取り揃え、その日の気分や服の色に合わせて様々に楽しめるようになっている。

 堀田さんは、「今までマスクといえば、『風邪のため』とか『花粉や感染症を予防したいから』など、ネガティブな動機で付けるものでした。カラーバリエーションを豊富にすることで、ファッションアイテムの一つとして楽しんで使ってもらえたらいいなという願いがありました」と語る。

 中には、3種の色が1枚ずつ入っているアソートタイプのパッケージもあり、「服を毎日変えるように、日ごとに異なる色のマスクを身につけたい」というニーズにしっかりと応じている。

 PITTAマスクの人気の理由は、自粛ムードの中少しでも日々に遊び心を取り入れたいという人々の気持ちに“ぴったり”と寄り添ったことにもあるのではないだろうか。

文=万亀すぱえ

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月17日掲載