「太田雄貴」会長就任で強化費が消えた! メダリスト「続けられない…」

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「不徳の致すところ」

 現状では協会から選手への補助は難しい。そう宣告されたようなものだとして、他の選手はこうも指摘する。

「太田会長は自分だけ目立つ形でお金儲けをしている、と選手は皆が不満を持っています。選手権を派手にやってスポンサーからお金を集めながら、見世物にした選手たちには遠征で自己負担を強いているわけですから……」

 その点について、太田会長は一貫しているそうだ。

「以前から、会長は『アスリート・フューチャー・ファースト』といって、引退後を見据えた活動をしろと言っています。“選手は自分を売り物にして、しっかりマーケティングをして、スポンサーを引っ張って来い”という趣旨の話を聞かされました。だから、“俺が引っ張ってきたスポンサーのカネは選手の強化費でなく大会運営に使うぞ”という考えなのでしょうけどね。太田会長にはできても、選手全員が彼の言うように、競技に集中しながら器用に外交活動ができるわけではないのですが」(同)

 エンタメで裾野を広げることに“投資”するのはいいが、そのために選手から遠征費を奪うのは、太田会長体制以降に始まった異常事態。それ故、現役引退を検討する選手もいるという。

“名選手、必ずしも名監督にあらず”とは言い得て妙だが、「改革の騎士」は選手たちからの猛烈な「突き上げ」をどうかわすのか。

 太田会長に、本誌記者が取材を申し込んだところ、

「僕の不徳の致すところで、大いに反省しています」

 と、潔く答えた上でこう話す。

「選手たちから上がった声に対しては、真摯に受け止めて反省すべき点はしないといけません。我々と選手たちとのコミュニケーションが足りず、説明が十分でなかった。自分も選手時代には見えていませんでしたが、協会の運営には本当にお金がかかる。会長以下専務まで、僕らは1日7、8時間働いても給料を1円も貰っていないのが実情です。競技人口がそもそも6千人しかいない中、72人の日本代表を支えていかないといけません。今のやり方を変えていかないといけないと思っています」

 強化費については、メールに太田会長が答える形で以下の説明があった。

「世界選手権の費用増額については、予備費を充当して対応したため、他の選手強化の遠征や合宿への影響はありませんでした。一方、長期的に見た場合に遠征に関する財政状況が年々厳しくなっていることは事実です。遠征事業をサポートするJOCからの助成金が減少傾向にあるなどの影響があります」

 決して一枚岩ではなかったことが露見したフェンシング界。選手たちに重い負担を強いる状況で、今夏に東京五輪が行われていたら果たしてメダル獲得は叶ったのか。五輪まで残された時間は少ない――。

週刊新潮 2020年6月11日号掲載

特集「『改革の騎士』は『裸の王様』! フェンシング『太田雄貴』会長体制で『強化費』が消えた!」より

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