「大谷世代」21人のプロ入り後を検証 甲子園に出場できなかった“雑草組”が活躍

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ドラフト9位だった佐野恵太

 この吉川と同じ内野手でドラ1入団したのが、今やチーム待望の右の和製大砲として期待されている大山悠輔(阪神タイガース)だ。

 プロ2年目の18年に、学生時代の本職であったサードを任されるようになると117試合に出場し、打率2割7分4厘、11本塁打、48打点を記録し、ブレイクした。

 続く昨季も開幕から105試合連続で4番打者に起用され、全143試合に出場し、チームトップの14本塁打、打率2割5分8厘、76打点という好成績を残している。

 まさに覚醒まで待ったなし!――という感じだが、つくば秀英[茨城]時代の高校3年間は、2年夏の県ベスト8が最高成績だった。エースで同学年の中塚駿太(埼玉西武ライオンズ)と投打の両輪を担ったものの、聖地への道は遠かった。

 二人とも高校卒業後は白鴎大[栃木県]へ進学、ドラフトで上位指名されるまで成長したというワケだ。

 最後に外野手だ。まず触れたいのは田中和基(東北楽天ゴールデンイーグルス)である。ドラ3位で立教大からプロ入りし、2年目のシーズンとなる18年に大ブレイクした。

 この年の5月下旬から1軍に合流すると“1番・センター”に定着し、105試合に出場を果たしたのだ。

 結果、打率2割6分5厘、18本塁打、45打点、21盗塁をマークし、なんとチーム史上3人目、野手としてはチーム史上初の新人王を獲得している。

 そんな田中は高校時代、西南学院[福岡]の正捕手としてチームを牽引、主に1、3番の上位打線に座り、スイッチヒッターの打てる捕手として活躍した。ちなみに対外試合では右打席で10本、左打席で8本の通算18本塁打を放っている。

 だが、九州国際大付を筆頭に強豪ぞろいの激戦区を勝ち抜くことは容易ではなく、最後の3年夏の県大会も9打数3安打の活躍及ばず、3回戦で福岡大大濠の前に1-8で敗退している。

 チーム不動の主砲だった筒香嘉智(28)がメジャーリーグ(タンパベイ・レイズ)へ移籍してしまった横浜DeNAベイスターズで、その後継候補No.1と目される佐野恵太は強豪校にいながら不思議と甲子園とは縁がなかった1人である。

 その高校というのが、春の優勝と準優勝が各3回、夏は準優勝4回を誇る広島の名門・広陵だ。チームは佐野が高1夏時に甲子園に出場しているが、本人がベンチ入りを果たしたのは2年時からだった。

 当初は内野手だったが、のちに捕手に転向し、チームの司令塔として活躍するも、県予選の最高成績は1年秋のベスト4留まりであった。

 高校卒業後に明治大に進学し、16年のドラフトで指名されたものの、なんとその順位は9位という超絶下位指名だった。

 そこから這い上がり、プロ3年目となる昨シーズンは8月中盤から一時期4番打者に抜擢されるなど、89試合に出場して打率2割9分5厘、5本塁打、33打点を記録している。今季からはチームの主将に任命されており、主軸としてのさらなる飛躍が期待される。

まだまだ逸材が?

 15年のドラフト5位で入団した西川龍馬(広島東洋カープ)も敦賀気比[福井]時代の3年春に甲子園出場を果たしているが、初戦敗退組である。

 丸佳浩(31)が巨人へFA移籍したことで昨年は外野にコンバートされたが、打率2割9分7厘、16本塁打、64打点と活躍し、レギュラーの座を不動のものにした。

 また、18年ドラフトでは高校、大学、社会人を経て1位で入団した近本光司(阪神タイガース)もいる。新人ながら昨年のセ・リーグ盗塁王に輝き、新人特別賞を受賞し、今や大谷世代を代表する外野手の1人となった。

 その近本も高校時代は激戦区・兵庫県の県立社で投手として活躍、県予選では2年夏と3年夏に連続してベスト8までチームを導くも、惜しくも甲子園には手が届かなかった。

 やはり大谷世代は、甲子園のスターより雑草軍団のほうが活躍していることが、お分かりいただけるだろう。

上杉純也

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月15日掲載

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