バレエ・オペラ業界が公演中止で損害2億円 寄付を募るも先行きは不透明

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 コロナに甚大な被害を受けた興行の世界。パリ・オペラ座バレエ団やウィーン国立歌劇場など一流どころの公演を招聘してきた「日本舞台芸術振興会」の高橋典夫専務理事も、落胆と疲労の色が濃い。

「公演中止に伴うチケット払い戻しが相次ぎましたし、9月に予定していたミラノ・スカラ座のオペラ『トスカ』と『椿姫』のキャンセルで生じた損害額も2億円以上です」

 ようやく緊急事態宣言は解除されたが、

「今後も密がダメだとなれば座席は前後左右を空けねばならず、客席数を実質半分にする可能性もある。とはいえ入場料を倍にするわけにもいきません。ライブハウスと違ってオペラやバレエの来場者は静かに舞台に見入っているわけで、飛沫感染が生じるとも思えないのに……。現実を考慮してくれないと、ほとんどの団体は死滅しますよ」

 無論、座してただ待っているわけにはいかず、

「私たちは特別定額給付金が支給されるとの報に接し、人様の財布を当てにするようなことには抵抗を覚えつつも、皆さま方に一部寄付のご協力をと訴えてきました。これまでありがたくも800人以上の方が応じてくださり、多くの額が集まっています」

 だが、表情はまた曇る。

「公演再開に向けては多くのスタッフや演者が改めて集まって準備、レッスンする必要がありますし、舞台装置の移動・搬入にも時間を要する。まだまだ道のりは険しく、遠いです」

 文化の灯が消えぬように。

週刊新潮 2020年6月11日号掲載

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