趣味のラブホテル観光 奇抜な趣向に見る“昭和人のパワー”

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「連れ込み」と呼ばれたのは昔の話。今の時代、「ラブ」より「ファンタジー」、レジャーランド感覚が重視されるらしい。そんな非日常の演出がたのしいヒミツの「愛の空間」を覗いてみよう。

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 そこに駆け込むカップルの胸の高まりを受け止めるには、非日常を演出するための仕掛けが必要なのか――派手なネオンと趣向を凝らしたインテリアのラブホテルは日本以外には韓国、台湾にしかないものだといわれる。

 この独特な空間を取り上げているのが『趣味のラブホテル』(新潮社刊)。奥手のオタク女子と美少女天使の2人が、実在するラブホテルを訪れるという設定のマンガで、車がベッドになっていたり、世界の国を各部屋のモチーフにしていたり、超豪華な内装など、ラブホ本来の用途ではなく、友人と遊びに行って泊まりたくなるホテルが取り上げられている。著者のらぱ☆さんはラブホテルの不思議な魅力についてこう語る。

「性的な空間に、ふつうのホテルにないインテリアやサービスがあって面白い。昭和には昭和の、平成には平成のニーズが反映されています。最近は“インスタ映え”するおしゃれな部屋が流行りです」

 昭和の趣きが残るラブホテル=「昭和遺産ラブホテル」に取材を重ねているライターの逢根(あいね)あまみさんによれば、

「バブル後半のものは、その頃の“空気感”、日本の勢いが感じられます。回転ベッドが置かれた鏡張りの室内に入ったときの、万華鏡の中にいるような感覚は忘れられません」

 当時の風俗文化に造詣が深い彼女によると、この「回転ベッド」の進化版が、「せり上がりベッド」。UFOのように、回転しながら2メートルの高さまで上がったり下がったりする。

「ラブホテルの経営者とメーカーが、次はどんな新しいものを作ろうか? というディスカッションを重ねた結果、こんなアイデアはどうかと考案されたようです」(逢根さん)

 奇抜な趣向が、恋人たちの“愛の営み”にどんな効果を与えたか定かではないが、なんでも面白がって新しいことに挑戦した昭和人のパワーは、「令和の世」には、すっかりなくなってしまうのだろうか。

 逢根さんホームページ:あまみのラブホ探訪(http://shumatsutraveler.club/

週刊新潮 2020年5月28日号掲載

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