コロナの日本人死亡率はなぜ低い 習慣? 人種? “ファクターX”に迫る

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「手洗い・マスク文化」「BCG」だけではなかった “重大要素” 「重症化回避の遺伝子を探せ」慶大・京大研究班が「ゲノム解析」

 10万人と900人――。アメリカと日本を比べるだけでも、死者数に圧倒的な違いがある。なぜ日本は欧米より感染が緩やかで死者も少ないのか。ノーベル賞受賞者の山中伸弥・京都大教授が「ファクターX」と名付けたその謎に迫る。

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 欧米の感染者数と死者数を比べれば、日本の特異性がより如実に浮かび上がる。

 アメリカは感染者数180万人以上、死者数は10万人を超える。イタリアも感染者23万人強、死者数約3万4千人。対して日本は、感染者数が約1万7千人、死者は900人を超えるほど。PCR検査数の少なさを差し引いても欧米の他の国と比べて、日本は低い水準で抑えられている、といえるのだ。

「日本の場合、一つはマスク着用の習慣が、大きな要因としてあると思います」

 と解説するのは、浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫氏。

「マスクは予防に効果はありませんが、感染させることを防ぐことはできます。また、日本はキスやハグをしないので、感染が広がらなかった、とも指摘できます」

 普段から手洗い、うがいが励行されている日本の習慣も功を奏したといえよう。

 これらに加え、東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科の寺嶋毅教授は、ある重大な要素についてこう言及する。

「肥満という要素も指摘できます。肥満の人はそうでない人に比べ、新型コロナウイルスによる重症化リスクが高い。オックスフォード大学ではBMI40以上の方の死亡率は標準体型の2・27倍という研究データが示されています。ニューヨーク大学の調査でもBMIが30未満の患者に比べ、BMI30~40で入院率は4倍、BMI40以上になると6倍になるとされています」

 肥満の患者が重症化するメカニズムについては、

「肥満とは内臓脂肪が蓄積された状態を指しますが、肥大化した脂肪細胞からは通常よりも多くのサイトカイン(免疫細胞のタンパク質)が分泌され、慢性的に血管に炎症を起こすことが分かっています。そこでウイルスに感染すると、重症化の原因とされるサイトカインストーム(免疫細胞の暴走)が起こり、血栓などができやすくなる。肥満は遺伝子と食生活が大きく関わり、日本人は肥満になりにくいとされています」(同)

 他にも、BCGワクチン接種の有無が、重症化に影響を与えているという指摘もある。実際、BCGワクチンを打っている国では死者数が少ない傾向が見られるのは事実である。

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