川上高司(拓殖大学海外事情研究所所長)【佐藤優の頂上対決/我々はどう生き残るか】

ビジネス 週刊新潮 2020年5月28日号掲載

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 これまでのところ、コロナ制圧については民主主義国家より、強権を発動して国民を徹底的に管理する独裁的な国家の方が、優位にあるかに見える。果たしてそれは民主主義国家の衰退を意味するのだろうか。それともその対策が間違っているだけなのか。コロナの感染爆発が変える国際秩序とこれからの日本を考える。

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佐藤 緊急事態宣言が発表された3日後の4月10日、安倍総理と面会したジャーナリストの田原総一朗氏は、総理から「第3次世界大戦は、おそらく核戦争になるであろうと考えていた。だが、このコロナウイルス拡大こそ、第3次世界大戦であると認識している」と言われたそうです。これは田原さんのブログに書いてありますが、朝日新聞など一部のメディアが取り上げただけで、あまり注目されませんでした。でも私はかなり重要な発言だと思っています。

川上 私もまさにそう考えています。国民への強いメッセージですね。

佐藤 川上先生は以前から「新しい戦争」という概念を提示しておられます。このコロナをめぐる世界の動きは、まさにそうした戦争ではありませんか。

川上 そうですね。これまで戦争は国家間の直接的、物理的な暴力行為だと捉えられてきました。でもいまはサイバー、ドローン、宇宙兵器、ロボット、ステルスといった軍事技術が急速に進んだため、戦争の形態が著しく変化してしまったんですね。そこで生じたのは、まず戦争か平時かの区別が難しくなったことです。

佐藤 確かにサイバー戦を考えれば、どこから戦争と呼ぶか、曖昧です。

川上 戦争のグレーゾーン化が起きている。また、戦争だとしても、いつ始まったのかがはっきりわからない。そして戦争の相手も国家だけではありません。2001年の同時多発テロ以降は、非国家との軍事的衝突も戦争とみなされるようになりました。

佐藤 すると、何をもって戦争というのか、わからなくなる。

川上 今年の初めにイランのソレイマニ司令官が殺害されましたね。アメリカが居場所を特定し、ドローンを使ってピンポイントで爆撃した。これは米軍というよりCIA(米国中央情報局)主導で行われたオペレーションです。その前後にもイラクの米軍基地にロケット弾が撃ち込まれるなどしていますが、これが戦争なのかどうかもはっきりしない。

佐藤 確かにそうですね。

川上 だからいま戦争というのは、この国際社会の中で、ハードパワー、ソフトパワーを駆使した総合力で力の優位を競うことだと、捉えた方がいい。その意味では、このコロナウイルスの感染拡大はまさに各国との戦争だし、第三次世界大戦だと思います。

佐藤 私もまったく同感ですが、第3次世界大戦と言う安倍総理の危機意識が、国内ではあまり共有されていない気がします。

川上 これが従来型の戦争ではないからでしょう。

佐藤 実際はいま、戦時下なんですよね。この戦争に勝てるかどうかわからないけれども、負けてはいけない。もうコロナ後の世界の話をする識者がいますが、まずは戦時下にあるという意識をきちんと持つことが必要です。

川上 それも小さな戦争ではないですからね。

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