内閣支持率急落で囁かれる安倍首相辞任のタイミング 党則第6条で揉める可能性

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両院議員総会で一点突破!?

 世論と官邸の間に乖離があるというわけだが、そうなると、内閣支持率の立て直しも、なかなか難しくなる。

「実際、打つ手が限られているのも事実だと思います。多くの専門家が指摘しているように、新型コロナを完全に収束させる、つまり感染者ゼロに抑え込むのは医学的に厳しい。安倍首相も『非常事態宣言の再発令はあり得る』と認めました」(同)

 そうなると、安倍首相は来年秋までが任期だが、衆院を解散できるタイミングもなかなかないという。

「小選挙区制のドブ板選挙で候補者は有権者と握手をかわし、選挙事務所は関係者が密集します。要するに三密の極みなのです。仮に安倍政権が総選挙を強行すれば、それだけで有権者の一部は“不要不急の選挙”と反発するでしょうね。このまま支持率も回復しないようだと、コロナ禍が一段落したあたりで、辞任する可能性もあるでしょう」

 そこで注目を集めているのが、自民党の党則だ。第6条は自民党総裁を「別に定める総裁公選規定により公選する」と定めているのだが、第2項は以下のように書かれている。

《総裁が任期中に欠けた場合には、原則として、前項の規定により後任の総裁を公選する。ただし、特に緊急を要するときは、党大会に代わる両院議員総会においてその後任を選任することができる》

 更に第3項には、こうある。

《前項ただし書の規定により総裁を選任する際の選挙人は、両院議員及び都道府県支部連合会代表各三名によるものとする》

 つまり両院議員総会で後継総裁を決める場合は、国会議員の投票がメインとなるわけだ。都道府県の党員票を最小限に抑えることができる。

「当然、安倍首相が辞任した場合、自民党総裁選を制した政治家が、次期首相に選出されます。その際、党内で『特に緊急を要するとき』であると認められれば、両院議員総会で選出することが可能です。このシナリオですと、“安倍元首相”が党内影響力を維持することが可能になります。ただし、これだと安倍さんが院政を敷きたいという思惑が丸見えです。党内からは『通常通りの全党員による総裁選を行うべき』という声が出るはず。間違いなく揉めると思います」

 安倍首相は何を考えているのか。それは「自分が首相を辞めるにしても、石破茂元幹事長(63)だけは首相にしない」との1点に尽きるという。安倍首相と石破氏の“確執”については、これまでにも多くのメディアが報じている。

「石破さんは特に地方の党員票を強いとされ、実際、“ポスト安倍”を問う世論調査では1位になることも珍しくありません。一方、派閥の石破派は小所帯です。もし国会議員がメインの両院議員総会で後継総裁を決めることになれば、安倍首相の“意中の人”が勝利する可能性は高くなります」(同)

 ただし、シナリオは完璧でも、肝心の“ポスト安倍”がなかなかいないという。大手マスコミが報じる“候補者”は多くとも、いずれも「帯に短し襷に長し」のようだ。

「安倍首相の後継者と目されていたのは、岸田文雄政調会長(62)です。いわゆる“禅譲”シナリオがたびたび、報じられていますが、少なくとも自民党内では新型コロナの対策を巡って、最も男を下げた政治家の1人です。官邸中枢から『政調会長のくせに、ろくな政策を持ってこない』と批判が高まっており、安倍首相も失望していると言われています」(同)

“安倍側近”の一部からは、麻生太郎財務相(79)を推す声も根強いという。

「じっと我慢して安倍内閣を支え続け、長期政権を実現した功労者であるのは間違いないと思います。『その労に報いたい』という党内の意見は理解できなくもありませんが、麻生さんは有権者の評判が非常に悪い。失言癖もあり、下手をすると内閣発足時から支持率が低迷したり、自民党の支持率に悪影響を与える可能性も否定できません。麻生首相を推す国会議員の中には、『あくまでワンポイントの起用だから大丈夫』という意見もあります。ただし、麻生さんには高齢の問題がありますし、やっぱり人気がない。そう簡単に党内がまとまるとは思いません」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年6月1日掲載

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