テラハ「木村花」さんに捧ぐレクイエム、プロレスファンでもそうでなくても…

エンタメ 2020年5月31日掲載

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“ダブル”という出自でいじめに

 しかしもう一方で、同じインタビューにおいて、小学校や中学校時代に、自身がダブル(母が日本人で父がインドネシア人)ということでいじめに遭っていたとあります。今回のSNS上の罵詈雑言は、その時の孤独感や辛い思いをよみがえらせてしまったのかもしれません。

 気になるのは、こういった状況に追い込まれた時に頼れるスタッフやマネージャーはいなかったのか、ということ。過去においてもネット上で炎上したことはままあるはずなんです。今回に限って言えば、彼女が大いに傷ついていることは番組に携わる者なら気づくことができたのではないかと思えて仕方ありません。

 同じテーマをもとにしたコンテンツが、 Netflix、フジテレビ、Youtube、SNSとメディアの間を循環する間に、視聴者の木村選手に対するネガティブな感情が増幅していったのかもしません。私の経験に照らしてもテレビ出演時、スタッフの皆さんは「徳光さん、そこまで言って大丈夫ですか?」と気にして声をかけてくださる場合が多かったんです。そういった対応は、少なくともここ10数年に限っては徹底されていたはずです。視聴者の熱量も高く、炎上もコンテンツの1つと考えているリアリティ・ショーなら尚のこと、万全のケア態勢がとられていなければならない。

 心ない書き込みをした連中も、コロナ禍における自粛生活で心身ともに疲弊していた可能性はあるでしょう。そんな中で「喜怒哀楽」の「怒」を煽るような番組を見せてしまったら……。そういった書き込みを目にしてしまった木村選手にも、コロナ禍で本業であるプロレスができないもどかしさがあり、「テラスハウス」で視聴者に嫌われている自分の存在意義を問うてしまう……。

「ネットの意見など無視すればいい、あんなのは民意じゃない」
 彼女の死後そういった意見も目にしましたが、それが出来る器用な人ばかりではないのです。
 そして、それが出来ない不器用なところも彼女の魅力の1つだったように思えます。

 他方で、今回の事件の後、番組制作者を脅迫する書き込みや連絡があったそうです。それは結局のところ、木村選手を追い詰めるような書き込みをした視聴者と同じなのだということに気づいて欲しいです。正義を勘違いしてはいけません。「指殺人」というイヤな言葉をまた目にしてしまった今回。これを奇禍として、新たな法律が制定されそうです。

 世界最高峰のプロレス団体「WWE」。そのマジソン・スクエア・ガーデンでのメインイベントを飾る木村選手の雄姿が見たかった。そして木村選手、今までプロレスファンにたくさんの夢をありがとうございました。

徳光正行
1971年12月生まれ。茅ヶ崎市出身。司会、タレント業。主な著書に『伝説になった男~三沢光晴という人~』『怪談手帖シリーズ』など。4月27日には岩井志麻子氏との共著『凶鳴怪談』が出版された。

週刊新潮WEB取材班編集

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