ワクチン開発合戦のいまだから考えたい 子宮頸がんワクチン接種の現状について

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 新型コロナウイルスに関してこれからの一大関心事はワクチンの話だろう。そんないまだからこそ知っておくべきなのはは、子宮頸がんワクチン接種に関する現状である。

全貌が解明されている

 すでに、米中でワクチン開発合戦がはじまっているが、元来健康な人に接種するワクチンだからこそ、安全性の担保は絶対に不可欠であり、そのうえでどれほどの有効性があるのか、しっかり確認されるまでは慌てて普及させるものではない。

 そうは言っても、継続的な感染リスクに精神的に耐えられない、あるいは、来年こそは東京オリンピック開催を是が非でも実現しなくてはと、ワクチン渇望へのはやる気持ちが抑えられない人たちは少なくないはず。ビジネス契機としても、無視のできない大きな市場といえる。

 がん放置理論で名のある元慶應大学病院放射線科医師・近藤誠氏。彼は、医療への恐怖心、医師への不信感につけ込み誇大にリスクを煽ることで、極めてシンプルな“がん放置”という方策を広く認知させることに成功した人物だ。その近藤氏は反ワクチン主義者としても有名だ。その著書から該当箇所を引用すると、

〈心臓死の危険がある“川崎病”は、日本での発症率が世界一。乳幼児にとって脅威となっていますが、原因が不明とされてきました。しかし、その多くにBCGその他のワクチンが関与しています〉

〈脳に生じる後遺症が重大です。ワクチンは四肢マヒや知能低下のように、副作用とすぐ知れるもののほか、意外な病気を発症させます。たとえば“ナルコレプシー”(眠り病)です。新型インフルエンザに対するワクチンがその原因になりました。ワクチンによって活性化された免疫細胞が、脳組織を破壊したのです。これを“自己免疫疾患”といいます。またB型肝炎ワクチンは被接種者の一部に、脳の自己免疫疾患である“多発性硬化症”を発症させるようです。ほかのワクチンも、自閉症や認知能力の低下などとの関係がいわれています〉

 近藤氏のみならず、世の中には反ワクチンを唱えるイデオロギーの強固な人たちがたくさんいる。

 みなの頭がウイルス対策に対してホットないまだからこそ考えたいのは「ヒトパピローマウイルス(HPV)」について。性交渉によって、人から人に感染し、感染の慢性化によって前がん病変とされる異形成から子宮頸がんが発生するウイルスだ。

 5月26日現在の国内データで比較すると、新型コロナウイルス感染者数は1万6500人余りにのぼり、死亡者数は830人。一方で、昨年1年間の国内における子宮頸がん罹患者数は予測値で1万500人。死亡者数は2900人。HPVは、新型コロナウイルスとは違って、ウイルスの全貌が解明されており、適切なタイミングでワクチンを接種できれば感染自体をブロックすることが可能。毎年3000人弱が亡くなるのを看過することはできないはずだ。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月29日掲載

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