「日本のコロナ対策は奇妙に成功」と米外交誌、日本のメディアもようやく気づき始めて……

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「無為無策」が最高の政策

 4月7日の宣言発出は理解できるが、池田氏は「その後の自粛継続や、5月4日に安倍首相が表明した宣言の延長は全く無意味でした」と厳しく批判する。

「安倍首相の新型コロナ対策を“無為無策”と批判する人がいますが、感染爆発が起きていないのですから、何もしないほうが正しいのです。むしろ安倍首相の致命的なミスは、まず『わが国は死者が非常に少ないので、特別の政策を行う必要性を認めない』と全世界に向かって説明しなかったことです。さらに緊急事態宣言を無意味に延長し、日本経済に甚大な被害を与えました。この2点は、強く批判されるべきだと思います」

 最後に残るのは、フォーリン・ポリシー誌の記事と同じように「なぜ日本人は新型コロナウイルスに罹患しにくいのか」という疑問だが、池田氏は「世界はBCGワクチンに注目しています」と解説する。

 BCGワクチンは日本人ならおなじみだろうが、念のために説明しておこう。厚生労働省の公式サイトから引用させていただく。

《BCGは結核を予防するために接種するワクチンです。その効果について、多くの文献を総合的に評価した結果、乳幼児期にBCGを接種することにより、結核の発症を52~74%程度、重篤な髄膜炎や全身性の結核に関しては64~78%程度予防することができると報告されています》

 あくまでも結核の発症を予防するものであり、新型コロナとは何も関係がない。ところがデータを分析してみると、興味深い結果が明らかになったのだという。

「G20諸国で、人口100万人あたりの死亡率を計算してみると、最上位のイタリア・アメリカ・カナダはBCG接種を義務化したことがない国であり、下位の日本・韓国・中国・インドは今も全国民に接種している国だということが分かるのです。特にインドのように医療サービスが潤沢ではなく、公衆衛生も遅れている国でさえ大規模な感染爆発が起きていないのですから、専門家がBCGワクチンに注目するのも頷けます」(同・池田氏)

 世界各国でBCGの臨床試験が行われているが、特に力をいれているのがオーストラリアとオランダだという。

「オーストラリアは染者数が少なく、国民の多くが新型コロナの抗体を持っていないことが明らかになっています。つまり、水際防止に成功しているわけですが、その分、一度感染を許してしまうと爆発するリスクを抱えています。そのためBCGワクチンが救世主になるのではないかと期待を寄せているのです」(同・池田氏)

 皮肉なことに池田氏は、「日本人が新型コロナに感染しにくい理由を、日本人が解明する可能性は低いかもしれません」と指摘する。

「仮にBCGのおかげで日本人は感染爆発が起きなかったことが明らかになったとすると、緊急事態宣言も、『8割の接触削減』も、全く意味がなかったことになってしまいます。特に政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議メンバーにとっては、自分たちの防疫政策を全否定されることになりかねません」

 せっかく感染を防いでいるのに、理由を解明して世界に説明できない。もし事実だとすれば、これこそ日本人の奇妙な点、だろう。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月19日掲載

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