「吉村洋文」府知事の通信簿 「橋下徹」「安倍首相」になくて彼にあるもの

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メディア出演は公務か?

「そして、国という権力に対して弱々しくてカネのない一地方という図式をうまく作り出せています。実際、東京都以外は国からの助成金ナシにはやっていけません。しかも陳謝する形で矛を収めた。これが橋下さんだったらムキになって、安倍さんガーとか総務省ガーとか言っていたかもしれません。コロナ禍で人気コメンテーターになった今でも、特措法を“クソ法律”と斬り捨てたりしていますよね。その後に、“昼の番組だから『お』をつけて、おクソ法律と言います”と続けたのはなかなかでしたが……」

 そんな橋下氏には苦い経験がある。大阪市長時代、在沖縄米軍兵士への風俗活用をめぐる発言がそのひとつだろう。当時、普天間飛行場の司令官と面会した際に、「もっと日本の風俗業を活用してほしい」「風俗業を活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをコントロールできない」と伝えたところ、司令官は「米軍では禁止の通達を出している」と会話を打ち切ったのだった。

 橋下氏はその後、「国際感覚が足りなかった」と釈明したが、地元紙からは、《彼に何より足りなかったのは人権感覚だ。人間認識の根本的な誤りに気付いていないのが問題なのだ》と批判を受けている。

 ともあれ、吉村知事の活躍が功を奏したのか、共同通信による直近の政党支持率では、日本維新の会が8・7%となり、立憲民主党の6・9%を抜いて野党トップに躍り出た。

「もともと維新は『自民の別動隊』と言われてきました。憲法改正に反対していませんからね。そもそも、自民党が下野した後、安倍さんが再び総裁選に出るか出ないかが話題になっていた2012年、橋下さんと松井さん(一郎・現大阪市長)は、自民党を割って維新のトップにならないかと打診しているほど。関係はその後も良好で、これだけ支持率をあげてきたので、『自公』という現在の枠組みに加えて『自公維』というものも持ち上がってきていますね。吉村さんの“活躍”で『別動隊』の注目度があがる分には、安倍さんとしては悪い話ではないでしょう」

 もっとも、好事魔多し。政治は一寸先は闇とも言う。連日のメディア出演について問われた吉村知事は、「公務」と説明した。その礼賛具合から、テレビ局のことを市役所の一部だと見ることは可能だが……。

週刊新潮WEB取材班

2020年5月15日掲載

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