早くも「マスク」の値段が下がり始めたウラ事情 再び高騰の可能性も…

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6月からまた値上げ?

 これで日本のマスクをめぐる騒ぎはひと段落――かというと、そうとも言い切れません。6月ぐらいからは、また「50枚3500円」の、2週間前と同じ状況になる可能性があります。

 その要因のひとつが、前回の記事でも触れた、中国における「粗悪品禁止令」。質の悪い製品が「メイド・イン・チャイナ」として世界に出回るのはよろしくないということで、中国政府は4月18日付けで輸出マスクの管理を厳しくしたのです。具体的には、「医療用か否かを明記させる」「包装は小売のできる形で」といったものです。規制によって、これまでのように簡単に輸出はできなくなり、日本にやってくるマスクの数も減りかねません。

 また依然として、原材料であるメルトブローは高騰しています。業者としても、できることならば高値で売りたい。だから品質にうるさく、値下げしないと売れない日本に輸出するくらいならば他の国に……となっても不思議ではないでしょう。

 5月いっぱいで緊急事態宣言が解除されるとなると、これがマスク価格の高騰を招くかもしれません。というのも、外出自粛がされていれば、外に出ないわけで、マスクをする必要がないわけです。逆説的ですが、緊急事態宣言によってマスクの需要は減った側面があるわけです。ところが解除によってみんなが外に出るようになれば、またマスクが必要になる。需要が高まれば値段も上がります。私の予想では、コロナの収束具合には関係なく、今年いっぱいくらいまではマスクをつけて過ごす習慣が続くと思います。

 こうした要因がありますから、先の中国輸入業者も「この価格で卸すのは今だけ」と言っていました。もちろん、日本国内の生産数は上がっています。日本衛生材料工業連合会会長でユニ・チャームの高原豪久社長は、今秋にも業界全体の生産枚数は月8億枚になるとしていて、18年度の国内の年間生産数が約11億枚だそうですから、これは大幅な生産増です。ソフトバンクが中国の大手電気自動車メーカーBYDと提携し、5月から月3億枚を確保したのも期待が持てます。とはいえ原材料が高騰していますから、日本製のマスクの値段も、コロナ前と同じようにとはいかないでしょうね。

 個人的には「アベノマスク」がもっと活用されるべきだと考えています。一般消費者は布マスクを積極的に使用し、効果の高い不織布のマスクは医療・介護従事者などに回すべきです。アベノマスクの失敗は品質管理が徹底できていなかったこと。きちんとした商品の目利きと品質管理ができるバイヤーを参画させ、業者に徹底させるべきだったと思います。

 地球上のあらゆる国が、「マスク」というひとつのものを同時に欲しがる状況は、人類史上はじめての事態です。値上がり値下げをふくめた混乱は、もうしばらく続きそうです。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、デイリースポーツ紙にて「最新流通論」を連載中。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月9日掲載

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