「すし居酒屋」がブームの兆し 大衆居酒屋チェーンにプラス1000円の魅力

ビジネス 企業・業界 2020年5月9日掲載

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クオリティの高い均一料金で選びやすさを訴求

「『すし居酒屋』という新業態が今勢いを増している」という。「それは、おすし屋さんでお酒を飲みながら刺身をつまんですしで〆るのとどう違うのか」と思ったのだが、この先端を行く二つの店を体験してみて、大きな勢力となる理由が分かった。

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 今、勢いのあるすし居酒屋の筆頭に挙げられるのは「鮨・酒・肴 杉玉」(以下、杉玉)である。回転ずしの「スシロー」を展開する(株)スシローグローバルホールディングスの子会社(株)スシロークリエイティブダイニングが展開していて、2017年8月に兵庫・西宮に1号店をオープン、2018年3月東京・神楽坂にオープンしてから大きな存在感を放つようになり現在20店舗になろうとしている。

 メニューは主にすし、てんぷらをアピールしていて焼きものはない。鮮魚を扱う店で焼きものも扱うと煙をはじめクレンリネス上面倒なことになるのであろう。焼鳥・ホルモンは専門店に任せて、鮮魚のバイイングパワーを持った外食企業がその強みを磨き込んでご馳走感を表現している。

 同店の特徴はメニューのほとんどが全品「299円」であること(一部399円・499円・599円あり)。これは同社グループの主力業態である回転ずしのノウハウによるものだろう。リーマンショックの後に、270円ないし280円均一の居酒屋が濫立したが、「杉玉」の低価格均一はこれらのクオリティとは雲泥の差だ。回転ずしであれば299円の皿とは大抵2カンだが、ここでは1カンでこの価格である。そして「雲丹といくらのこぼれ軍艦」とか、「鮪ロッシーニ風」「キャビア寿司」など、高級な食材でお値打ち感を表現している。2カンの商品で「飲めるサーモン」というものがあるが、低温調理したサーモンがとろとろに柔らかくなっている。

 一般的な居酒屋メニューとして「冷たいの。」が12品目、「温かいの。」が16品目ある。「冷たいの。」には「〆さば、薬味にまみれる。」「鬼おろしが主役。脇役に生ハム。」など、また「温かいの。」には「ラーメン〇郎のもやし」「イカゲソのワヒージョ」など、「飲めるサーモン」と同様にネーミングにこだわっていて記憶に残る。

 最も感動したのは「刺身。」であった。「欲張りな刺身四点盛り」というネーミングで、まぐろ、ハマチ、鯛、〆さばを一切れずつ盛り込んでいる。一般的な居酒屋で刺身は一人では食べきれないほどのボリュームがあるが、この「刺身。」はお一人さまの利用動機をキャッチしている。

 ここの299円は、価格の安さではなく、注文する際の気安さを訴求している。このような価格を「アフォーダブルプライス」と呼ぶ。サイゼリヤやユニクロの価格戦略である。お客さまは目的意識を持ってお店に入り、単品ではなくあれやこれやと複数の買い物をする。

 フロアスタッフは20代の女性がメインだった。そして、接客する時の言葉が少なく、なれなれしい話し方もしない。これも既存の居酒屋とは一線を画していてサービスの新しさを感じた。

 筆者は「いつものハイボール」「紀土(純米)半合」「欲張りな刺身四点盛り。」「イカゲソの唐揚げ」「旨い。茶碗蒸し」「飲めるサーモン」「雲丹といくらのこぼれ軍艦」以上、299円、「巣杉玉(純米酒)1合」599円で会計が2961円(税込み)となった。

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