総額13兆! 10万円給付に戦々恐々“手負いの警察”現金手渡し強盗とコロナ詐欺

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強盗を誘発か?

 新型コロナウイルス感染症対策の補正予算案が組み替えられ、全国民に一律10万円の給付が決まった。すでに郵送やオンラインでの申請受付が始まっているが、受け取り方が懸念材料なのだとか。

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「一律10万円給付に、捜査当局はかなり神経をとがらせているんですよ。特に警察はね」

 と、ある警察庁関係者は話す。

「普通は口座振り込みと考えますよね? でも、高齢者はATMまで行けませんし、入院している感染者も同じ。自宅で療養中の人もそうかもしれません。そういった人たちには現金書留での手渡しっていう可能性が出てくる。となると、それを持った郵便局員が全国で配達に回るということ。それこそ自宅待機でストレスがたまっていたり、国や政府に恨みつらみを感じている人は少なくないので、強盗を誘発する可能性があって、心配する声が出ているんです」

 2009年の「定額給付金」を振り返ってみると、給付額は1人1万2000円だった。それでも、当時の金高雅仁・警察庁総括審議官(後に警察庁長官)はこう話していた。

「いま警戒しているのは、政府が来春に予定している定額給付金の支給をかたる手口です。伝えられている予定では金額で2兆円規模。全国約1800ある区市町村で手続きが行われ、給付金が支給されます。いまはまだ手続きも決定されていない段階ですが、既に『少し早いですが、うちの町ではこうなりました』と、ATMに誘導、送金操作をさせようとする事例が散見されており、警戒が必要です」

 今回の額は1人10万円。総額12兆8803億円の予算規模なのだから、警察の警戒具合は推して知るべしだろう。

 先の省庁の幹部は、「それだけじゃないんですよ」と続ける。どういうことなのだろうか。

「警視庁渋谷署の留置場で5人が感染して閉鎖・消毒ってなりましたよね? それに加えて警察内部の感染者が増えつつある。赤坂署では刑事課の女性巡査が新コロにかかって、巡査と接触があった署員73人を自宅待機にしました。その代わりに警視庁本部から100人規模の人員を派遣。実際の自宅待機組はもっと多かったとも言いますが、たった1人の感染で100人単位が影響を受け、その穴を他部署が埋めなければならない」

 捜査の現場は3密そのもの。不特定多数との接触も多い。差し当たって、警視庁、埼玉、愛知、高知、兵庫などの警察職員70人以上に新型コロナウイルス感染がわかり、5月3日には、神奈川県警の60代警察官が感染で亡くなった。全国の警察官では初めてのことだ。

「そんな手負いの状況で、給付金強盗に狙われたら……ということで戦々恐々としているようなんです」

地雷がそこらじゅうに

 もちろん、コロナに便乗した詐欺被害は全国から報告されている。警察庁によると、
3月上旬から4月27日までに13都道府県で計32件、被害額は計3117万円に上るという。

 被害の有無にかかわらず、たとえばこんな事例があったという。労働局職員を騙る者から「コロナ対策で助成金が出る。マスクも送付する。手続きのために口座を登録してほしい」などと電話があり、無人ATMに向かうよう指示があったり、水道業者を名乗る者から電話にて「水道管にコロナウイルスが付着しており、これを除去するのにお金がかかる」などと言われたり、スマホに「10万円配布につき、お客様の所在確認。詳細はURLへ」とホームページへのアクセスを促すメールが届いたり、小売店や飲食店に「無料で消毒をしている」「助成金が出る」と連絡があったり……。

 給付金を無事に受け取れたとしても、その後に10万円を狙った特殊詐欺が待ち構えていることは容易に想像できる。

 警視庁では、【コロナで「不要不急の逮捕は控えよ」 警視庁の困惑】と号令が下っているが、殺人や強盗はこれまで通りの対応だ。

「強盗にせよ、特殊詐欺にせよ、容疑者を逮捕する段階で、その人物が新コロに罹患している可能性もあるわけで、注意が必要です。さらに勾留、取り調べもあり、言葉は悪いですが、地雷がそこらじゅうに埋まっている感じ。気が遠くなりますよね」

週刊新潮WEB取材班

2020年5月8日掲載

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