コロナ禍の不安に追い打ち…政府発表の「富士山大噴火」シミュレーション

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 儒学者の新井白石は、富士山の宝永大噴火(1707年)の様子を「折たく柴の記」に書き残している。それによると、昼間から黒雲が江戸を覆い、雷鳴が響き渡ると、空から白い灰が降ってきたという。それが今起きたらどうなるのだろうか。

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 3月31日、政府の中央防災会議が富士山噴火のシミュレーションを明らかにした。それによると宝永大噴火クラスの噴火が起きると、風向きによって首都圏で2~10センチの火山灰が降り積もる。運悪く雨が降っていた場合、3時間後には横浜市から千葉市までの電車がストップし、大規模な停電が東京、神奈川、千葉や埼玉で発生する。また少量の降灰でも、買い占めが起き、食料や水の売り切れが続出。さらには、基地局に灰が付着することで携帯電話も通じなくなるという。

 内閣府の防災担当者が言う。

「この報告は、ワーキンググループによる4回の会議をまとめたもので、これから関係する省庁や事業者による対策を話し合うところです。具体的には、避難場所の確保や、買い占めをどう防ぐかを話し合うことになります」

 折しも報告を出した当日は、新型コロナウイルスの感染者が一気に200人以上増え、緊急事態宣言が検討され始めたタイミング。店頭からマスクが消えて久しく、食料品が消えた店もあった。不安が現実になったところに、不吉な予測が追い打ちをかける格好になってしまったのである。

 が、火山学者で東大名誉教授の荒牧重雄氏が言うのだ。

「いつとは言えませんが、日本のどの火山も噴火の可能性があります。コロナウイルスとは関係なく災害に対する備えを怠ってはいけません。中央防災会議のワーキンググループは2年前からこうした検討会を重ねてきており、むしろコロナだからといって発表を控えるほうがおかしいです」

 ウイルスだけでなく火山灰まで降ってくるなんて、想像したくもないけれど。

週刊新潮 2020年4月30日号掲載

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