【コロナ禍】ワシが緊急事態宣言は必要なしと主張する理由……小林よしのり氏インタビュー

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独自の“安倍批判”

 安倍首相のリーダーシップを疑問視する際でも、一般的な世論は「緊急事態宣言の発令が遅すぎた」と指摘する声が多い。だが小林氏の示す論拠は全く違う。

「専門家は『大丈夫です』とは絶対に言えません。最大限に見積もった危険を訴えるのが仕事であり、社会的使命でもある。政治や経済に忖度する必要はなく、だから専門バカとも言われてしまう。しかし政治家は、総合的に状況を把握し、政策を決定しなければなりません。未知のウイルスとはいえ、今のところ死亡者数は250人超です。それでも経済を止めてしまい、失業者と倒産企業を大幅に増加させるのは、全く間違っている。緊急事態宣言の遅れを批判しているのではなく、安倍首相が宣言を発令したことを問題視しています」

 新型コロナが収束するという未来像は曖昧なままなのに対し、小林氏は「自粛疲れは必ずやって来ます」と予測する。

「日本人が日常を取り戻そうと繁華街に戻ったり、観光地に出かけたりすれば、新型コロナの感染が再び拡大しない保証は、今のところありません。再拡大したら、また非常事態宣言を発令するのでしょうか。そして同じように自粛に疲れて経済活動を再開させると、感染が再々拡大し、またまた非常事態宣言を発令するのでしょうか。いつまでたっても、文字通りのいたちごっこで、キリがありません。疑うべきは自粛なのです」

 新型コロナの問題と直面している日本の状況を、「戦時下」と形容することも目立ってきた。これにも小林氏は異議を唱える。

「戦時下の都民は、毎日B-29の空襲を受け、バケツリレーで火災に立ち向かっていたわけではありません。屋外に出ることを自粛し、自宅に閉じこもっていたわけでもありません。敗戦が濃厚でも、空襲のぎりぎりまで経済は回り、人々は普通の日常生活を送ろうとしていました。戦時下の日本に、現在のような“自粛”は存在しなかった。この事実は極めて重要でしょう」

週刊新潮WEB取材班

2020年4月27日掲載

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