コロナ禍に大学で勃発する学費免除問題 全国に波及する学生のオンライン署名運動

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 新型コロナウイルスの猛威が止まらない。

 言わば「3密」代表格の一つとも言える日本の大学でも、その足音は急激に大きくなっている。3月末、京都産業大学でクラスター感染が発生し大きな問題となったが、もちろんコロナウイルスは関西と関東を区別したりはしない。

 下記は4月21日現在、都内大学のwebなどで公表されている学生・教職員の新型コロナ感染者数の一部だ。

*東京大学…教職員1名
*早稲田大学…学生2名/教職員2名
*学習院大学…学生1名
*東洋大学…教職員1名/学生3名
*明治大学…学生2名
*青山学院大学…学生1名
*中央大学…学生1名
*法政大学…教職員1名(4月14日死亡)

 現在、ほとんどの大学ではキャンパスへは入構禁止となり、自粛期間が終わる予定となっている連休明けから授業はすべてオンライン授業で行われることになった。

 政府の緊急事態宣言下でこうした大学側の対応は当然だが、ここで大学側と学生側の間に新たな喫緊の問題が発生している。

 それが「学費一部免除問題」だ。

 それはそうだろう。教室や図書館、サークル室など学内の施設などそのほとんどは使用不可となり、オンライン授業に対応するためのパソコンやインターネット環境の用意は基本的に学生側で負担しなければならない。

「この状態で通常授業が行われた時と同等の授業料を負担するのは納得できない」と考えて当たり前だろう。

 こんな時、半世紀前なら所狭しと立て看板がキャンパス内外に並び、デモ隊がキャンパスを取り囲み、ハンドマイクを持った学生が騒いでいただろう。

 当たり前だが、現在多くの大学が「ロックアウト」する中、事前に許可をもらった学生や教職員の一部を除いて、大学には入ることができない。大学の正門前にも学費免除をメッセージするものはない。

 では「学生たちは大学側にこの学費一部免除に関する要求を何ら示していないのか?」と言えば、それはまったく違う。

 今、学生たちは「オンライン署名サイト」で大学側に自分たちの要求を必死に伝えているのである。

 学生たちは「一部学費免除」という自らの主張を伝え署名を集めるツールとして、主に「change.org」というオンライン署名サイトサービスを使っている。

 2007年にアメリカで立ち上げられたこのサイトサービスは、2019年10月現在、世界に3億人以上のユーザーを抱えている。

 最近では、2018年12月JR山手線の新駅名「高輪ゲートウェイ」の名称を巡り決定方法が不透明だとするコラムニストの能町みね子さんが「撤回署名」を始めた際、この「change.org」が使われて最終的に約4万8000筆を集めた。

「change.org」の使い方は簡単だ。このサイトにアクセスし、自分の氏名とメールアドレスを入力し、専用アカウントを作る。必要に応じて住所や電話番号なども登録する。次に、サイトで嘆願内容や署名の提出先などを書き込み、賛同者を募る。訪問者は会員登録することによって、そのキャンペーンに賛同することができる。

「change.org」による署名活動はFacebookやツイッターなどのSNSでも拡散することによって、通常の署名活動時より多数の署名数を短時間で獲得できる。また、キャンペーン賛同者は署名時にメールアドレスを記載することから、署名した人は署名活動の結果をリアルタイムに共有することができる。

 今回の場合、それぞれの大学で学費一部免除キャンペーンを始めた人が設定した「目標人数」を達成すると、そのオンライン署名を大学側に送ることになる。

 今までの署名活動ならここで大学側から「検討します」などと言われた後、いつの間にかうやむやになったりしがちだった。

 しかし、オンライン署名の場合は単純にそうはならない。大学側の回答結果がリアルタイムで署名をした人全員に共有されるからだ。

 もしも大学側からの回答があまりにも「誠意のない回答」だった場合、署名者たちはさらにその情報をSNSなどで拡散することによって、大学側はさらなる批判にさらされていくことになるだろう。

 要は、大学側にとってこのオンライン署名とは単に無機質な「署名数」を意味するのではなく、「増殖する可能性を持ったコミュニティ」の存在を意味することになるのだと思う。

 一方、「change.org」には以前より「利用者から提供された個人データを別会社サイトへ販売して利益を得ているのではないか」という批判などがあるものの、上記のような利便性からオンライン署名活動をする際、多くの人に使われているようだ。

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