株主総会直前に風雲急! 積水ハウス「会長派vs.前会長派」の多数派工作

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〈この街に この家に こころは 帰る/家に帰れば 積水ハウス〉

 そんな歌でお馴染みのCMは、1970年に放映が始まったという。

 かの小林亜星氏が作曲したメロディに乗せて、マイホームに集う家族の情景を盛んに喧伝してきた積水ハウス(本社・大阪府大阪市)。今年で創立60年を迎える、日本を代表するハウスメーカーが、“お家騒動”に揺れている。

 来る4月23日に行われる第69回定時株主総会を前に、現会長の阿部俊則氏をはじめ4人の代表取締役たちの退陣を求める「株主提案」が提出されたのだ。

 経営陣に反旗を翻したのは、積水ハウスの前会長でCEO(最高経営責任者)だった和田勇(いさみ)氏をはじめ、現在も取締役として役員に名を連ねる勝呂(すぐろ)文康氏らである。彼らは、阿部会長ほか総勢11名の現執行部の代わりとして、自分たち11名を取締役として選任するよう求め、機関投資家や株主たちに賛同を呼びかけているのだ。

 対する現経営陣は、この提案に反対を表明して、阿部会長らの留任を逆提案。まさに「会長派」と「前会長派」の全面対決となっているのだが、その背景にあるのは、3年前に起きた「地面師事件」に他ならない。

 疑惑の舞台となった土地は、東京・西五反田にある。JR山手線の五反田駅から徒歩3分という一等地にあった老舗旅館。その跡地を買い取り、地上30階建てのタワーマンション建設を目論んだ積水ハウスが、土地所有者に扮した地面師一味と契約して、55億円もの巨額の資金をまんまと騙し取られたのだ。

 全国紙の社会部記者が解説する。

「被害者とはいえ、積水ハウスはなぜ架空取引を見抜けなかったのか。本来は、土地取引の稟議書に判をつき、いわばゴーサインを出した当時の社長である阿部氏ら役員の経営責任が問われてもおかしくないところ、2018年2月に阿部氏は会長に昇格し、和田会長が実質的に解任される電撃人事が発表されたのです」

 表向きは経営陣の“世代交代”だとして事件との因果関係を否定したこの「交代劇」。実際には、18年1月の役員会で和田氏が「阿部解任」の動議を出したが、阿部氏も「和田解任」の動議を掲げ、最終的には子飼いの役員の裏切りもあって会社を追われたのだ。

「悔しいというか、ここまで会社を築き上げてきて、なんでこんな目に遭わなあかんのかと思いました」

 と振り返るのは、“追放”された和田前会長ご本人。

「事件当時、私は国際事業の新規開拓に乗り出すべく、アメリカや中国などへトップセールスを展開していました。それで国内事業を全て阿部君に任せてしまった結果、会社がこんなことになり……。自らも追われる立場になってしまった。もう一生の不覚やと思っています」

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