コロナ対策で「小池知事」の変わり身の早さ “命より五輪”で厚労省の警告無視から一転

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周辺県の知事の怒り

 周知のように4月7日、7都府県を対象に緊急事態宣言が出されたが、不安を煽り立てるテレビなどの影響で、すでに世論は、さらなる引き締めを望んでいた。むろん小池知事は、こうした風向きの読みはお手のものである。再び都政担当記者が話す。

「総理が緊急事態宣言を出してから、当該地域の知事が、特措法第45条にもとづき外出自粛を要請し、第24条にもとづき施設等の使用制限を求めることになっています。ところが、小池知事は安倍総理が宣言を発令する前日、先走って会見を開き、居酒屋や理美容、百貨店などにも休業を要請すると言ってしまった。結局、それら3業態には休業要請しないことになりましたが、百貨店などは閉める体制を敷いてしまったので、いまさら開けられません」

 結果、多くの事業者を苦境に追いこんでいるわけだが、それだけではない。

「休業要請などは、他県と足並みをそろえる必要があるのに、小池知事が独自に打ち出した、休業に応じる事業者への最大100万円の協力金は、財政的に潤沢な東京都にしか支払えない。だから神奈川県の黒岩知事をはじめ、みな反発しましたが、結局、都に倣うことになった。たとえば、東京では7時までしか飲めないお酒が、他県では遅くまで飲めれば、都民が押しかけてくる。それを避けるために都に倣うだけで、周辺の知事はみな、はらわたが煮えくり返っています」(同)

 しかも、10日に休業要請の詳細を明らかにした際には、「権限は社長かと思ったら、天の声がいろいろ聞こえてきて、中間管理職になった感じ」と発言。自身のフライングも、安倍官邸のイメージ低下につなげる手管はさすがである。

 先の政治部記者は、

「国が予想もしなかった小池さんの動きを、政権幹部たちは完全なスタンドプレーとみなしています。安倍総理はコロナ担当の西村康稔経済再生相に、“各知事がバラバラになってはいけないので調整するように”と指示しましたが、小池さんが抵抗したために難航しました。実際、小池さんのようにやると、もう一段ギアを上げたいときの手段がない。官邸は東京から他府県へのコロナ疎開を防ぐためにも、東京にそれなりの社会的機能を残したかった。安倍総理は“休業要請を出したりして調子に乗っているな。アピールに一生懸命じゃないか。協力金とか言ってるけど、世界に直接補償している国はないんだよ”と話しています」

 と解説し、こう続ける。

「小池知事は結果的に、官邸や政府への影響力を強めた。彼女はそれに自信を持って、政治家としてもう一歩、高いフェーズに行こうという野望を抱いていると言われています」

 さる官邸関係者が語る。

「小池さんは3月半ば、二階幹事長、それに天敵だった自民党都連の内田茂前幹事長との手打ち式を行って、選挙での心配がなくなった。だから積極策に出られるのです。もっとも、これほどスポットライトを浴びるとは、本人も想像しなかったと思いますが、霞が関では“持っている政治家だ”と盛んに言われています。ただ、菅官房長官らは我慢がならず、“経済も大事だ”という対立軸を構築。その先は、人命優先か、経済優先か、というおかしな争いになっています」

 野望や策謀というきな臭さとは裏腹に、小池知事は度重なる外出の自粛要請や休業要請に際し、「みなさま自身を守るため、家族を守るため、大切な人を守るため、私たちが生活するこの社会を守るため」と繰り返し訴えている。

 官邸との対立を逆手にとり、「人命優先」という、だれも否定できない切り札を手に、盤石の論戦に挑んだ結果は、すでに表れている。メディア各社の世論調査で、8割超が、緊急事態宣言の発令は「遅すぎた」と答える一方、都の休業補償については、8割超が評価したのである。

週刊新潮 2020年4月23日号掲載

特集「『命か経済か』で『安倍官邸』を悪玉に! 『小池知事』の『希望・野望・策謀』再び」より

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