【コロナ禍】ミニシアターの危機 渋谷「ユーロスペース」支配人が心配な“ポスト・コロナ”

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廃業や倒産の可能性も

 新型コロナウイルスの猛威が、様々な経済活動に悪影響を与えているのは言うまでもない。その中でも、小規模の映画館、「ミニシアター」の苦境に焦点を合わせた報道が目立つ。メディア側の「未知のウィルスが文化も破壊している」という危機感が背景にあるようだ。

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 主な報道からタイトルをご紹介しよう。出典は全て電子版だ(註:全角数字を半角に改めるなど、デイリー新潮の表記法に修正した。以下同)。

▼「『コロナ終息後に再開できない』映画館の悲痛な声。ミニシアターを救うために、今できること」(BuzzFeed News:4月8日)

▼「文化芸術へ支援なく…ミニシアター消滅危機で映画業界窮地」(日刊ゲンダイDIGITAL:4月9日)

▼「Tシャツ買って応援して! 苦境のミニシアター13館―新型コロナ」(時事通信:4月9日)

▼「補償なき現状…経営難のミニシアター、製作スタッフも失業状態で業界窮地」(シネマトゥディ:4月10日)

 新型コロナの蔓延によって、ミニシアターで何が起きており、これから何が起きるのか。日本を代表するミニシアターの1つ、ユーロスペース(東京都渋谷区)の北條誠人支配人(58)に取材した。まずは、どれほどの苦境に陥っているのか、現状を語ってもらった。

「新年のスタートは例年通りで、2月15日に『第9回死刑映画週間』を迎えました。これは9回目という人気の企画ですし、今年は上映作品も、ゲストに来てくださった方々の顔ぶれも、非常に充実していたんです。自信を持っていたのですが、いつもに比べて3割くらい少ない。これが“異変”を感じた最初でした」

 2月22日からは「特集上映 原田芳雄生誕80年」が始まったのだが、この週は夜のトークショーは盛況だったものの、午前中の回は出足が鈍かった。つまり、シニア層が来館していなかったのだ。

「3月25日は水曜でしたが、小池都知事が緊急の会見を開き、夜間の外出と週末の不要不急の外出について自粛を要請。これを受け、私たちも3月28日と29日の土日を休館とし、30日の月曜に再開しました。すると一気に観客数が下落し、これまで見たこともないほど悪い数字が続くようになってしまったのです」(同・北條支配人)

 通常、ユーロスペースで上映される映画の公開初日は、土曜に設定される。だが、その後もユーロスペースは土日の休館を続けた。そのため月曜が公開初日となってしまい、更に客数の悪化を招いたという。

 となると、公開スケジュールが確定していたはずの配給会社も、「公開を延期できませんか」と打診するようになった。

「客足は極端に落ち込み、東京の感染者数は増加の一途で、『我々の映画館でクラスター感染が発生してしまう』という懸念も現実味を帯びてきました。私たちは緊急事態宣言の発令に合わせて休館としましたが、たとえ宣言がなくとも、どのみちゴールデンウィーク明けまでの自主休館を決めていたと思います。それくらい厳しい状況でした」

 ユーロスペースは1982年5月に開館した。以来、38年の歴史を誇る。その間に休館したのは、1989年2月24日、昭和天皇の国葬として行われた大喪の礼と、東日本大震災が発生した翌日となる2011年3月12日から14日までと昨年の台風19号の時だけだ。

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