コロナ巣ごもり生活 100万部突破『ペスト』に学ぶ

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今と同じ状況

「物資を買い占める人が出てきたり、“これを飲めば治る”とインチキ商売をする人が出てきたり、差別やヘイトが広がるなど、驚くほど新型コロナウイルスに揺れる今と同じ状況が描かれています。こうして読んでみると、自分たちの現状を客観視できて、心を落ち着かせることができます」(同)

 そう言って、カミュが本書で描きたかったことを続けてこう解説する。

「物語の序盤には、役人が“ペスト”という病気の名を口に出すのを避け、恐ろしい現状を認めたくない心理が描かれます。カミュがこの小説で描きたかったのは、病気そのものよりも人々に無作為に降りかかり、また人間の技術をもってしても克服することのできない不条理さでした。必ずしも、救いのある物語ではありませんが、死と隣り合わせの現実を受け入れながら、ペストと闘う人々の姿には希望を見出すことすらできます」

 巣ごもり生活の糧となりそうである。自宅に籠ってゲームやワイドショーに没頭するだけでなく、この機会に文学の力を堪能してはいかがか。

週刊新潮 2020年4月16日号掲載

特集「『緊急事態宣言』を生きる」より

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