コロナ巣ごもり生活 100万部突破『ペスト』に学ぶ

国内 社会 週刊新潮 2020年4月16日号掲載

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〈一匹の死んだ鼠につまずいた〉

 こんな言葉から物語が始まるアルベール・カミュ著『ペスト』が爆発的な売れ行きを見せている。

 1940年代のアルジェリア・オラン市で伝染病ペストが発生。人々の見えない敵との闘いを描く本書は、新型コロナウイルスの流行後、15万部以上を増刷、累計で100万部を超えたという。通常の売上は年間5千部ほどなので、わずか2カ月で30年分に匹敵するほどの売れ行きということになる。

 その反響について、東京の紀伊國屋書店新宿本店の担当者は、

「入荷しては売り切れを繰り返していて、男女を問わず、40代から50代を中心に手に取られています。ウイルスが流行しなければ読まれることもなかったのですから、ただただ困惑するばかりです」

 とはいえ、こうした現象は今回が初めてのことではない、と翻訳家の鴻巣友季子氏が解説する。

「実は1923年の関東大震災が起こった時にはイギリスの作家、エドワード・ブルワー・リットンの『ポンペイ最後の日』がヒットしました。ヴェスヴィオ山の噴火で埋もれたローマ帝国のポンペイを舞台にした小説です。人の心理として、天災に見舞われた時は似たような境遇を描いた小説を読みたくなるのでしょう。悲惨な物語を読むことで“ここまで酷くない”という相対的な安心感を得られるのかもしれません」

 実際、鴻巣氏が『ペスト』を読み直すと、現在との共通点が多く見つかったという。

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