「アベノマスク」の吉凶(KAZUYA)

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 4月1日、安倍総理から新型コロナウイルス感染症対策本部で、1住所あたり2枚の布マスクを配布する旨の発言がありました。

「なるほど。エイプリルフールだから笑わせようとしているんだな」と思っていたら本当でした。慢性的なマスク不足が続く中、2枚でも配布されるだけありがたいとする人もいましたが、圧倒的に批判的に捉えられ、アベノミクスをもじって「アベノマスク」と呼ばれる始末です。

 4、5人の家族なら足りませんし、翌日の菅官房長官の会見で布マスク1枚あたり200円という数字も飛び出しました。単純計算すると200億円です。さらに送料等諸経費を考えると、恐ろしい金額になります。そこまでしてやることかと疑問しかありません。

 布マスクは洗って使える利点がありますが、しっかり洗って乾かさないと不衛生で逆効果になりますし、そもそも布マスクは目が粗く、予防効果は期待できないと指摘されています。他人へうつさないという意味では効果があるため、しないよりはした方がいいでしょう。

 しかしその布マスクに200億円使うべきかは考えものです。

 どうせ効果が限定的なのであれば、手軽にできるハンカチマスクの作り方を総理が啓発するなどの方法もあります。検索するといくらでも出てきますが、ミシンもいらず、材料はハンカチとヘアゴム2つだけです。200億円は他に使ったほうがいいでしょう。

 日本政府は爆発的な感染の瀬戸際にいるとの認識を表明しながら、それでも平時の対応をし続けています。

 マスクにしたって、有事なのですから政府が一括して管理し、医療機関等優先度の高い施設に分配をしていき、その後国民に振り分けたらいいでしょう。台湾は2月初旬に身分証明番号が記録された健康保険カードを使い、薬局で週に2枚買える配給制を導入していました。生産態勢を官民一体で整えた台湾は、その後買える枚数も徐々に増え、4月に入ると蔡英文総統は友好国の医療従事者へマスクの支援を行うと発表しました。国内需要を満たしたからこその海外援助です。

 日本は有事に対する態勢がまるで出来ていなかったため、台湾のような手法を取ることが出来ず、さらに買い占めや転売を抑えることに関しても後手に回ってしまいました。今も完全に政府が統制管理をしているわけではありませんし、増産を続けても国民の手に渡らない状況が続いています。

 感染症を含め、未知の有事が今後発生する可能性は十分にあります。その際にしっかりとスピード感のある対応をするための法整備と態勢づくりを今後進めていくべきでしょう。

 経済対策としては現金給付も視野に入っています。日本もマイナンバーを活用し、銀行口座と紐付けておけば給付もスムーズに行うことが出来ます。

 人権がどうこうという批判も当然あるでしょうが、今回明らかになったように、有事の際は強権的に進めないと、結局苦労するのは国民なのです。

KAZUYA
1988年生まれ、北海道出身。12年、YouTubeで「KAZUYA Channel」を開設し、政治や安全保障に関する話題をほぼ毎日投稿。チャンネル登録者70万人、総視聴数は1億4千万回を超える。近著に『日本人が知っておくべき「日本国憲法」の話』(KKベストセラーズ)

週刊新潮 2020年4月16日号掲載

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