FBIからの電話~コロナ禍の株主総会「積水ハウス」“仁義なき戦い”

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「一生の不覚やと思っています」

 今年、創立60年を迎える積水ハウス(本社・大阪府大阪市)。この日本を代表するハウスメーカーが、風雲急の“お家騒動”に揺れている。

 来る4月23日に行われる第69回定時株主総会を前に、現会長の阿部俊則氏をはじめ4人の代表取締役たちの退陣を求める「株主提案」が提出されたのだ。

経営陣に反旗を翻したのは、積水ハウスの前会長で最高経営責任者(CEO)だった和田勇氏をはじめ、現在も取締役として役員欄に名を連ねる勝呂文康氏たち。彼らは、阿部会長ら現執行部の代わりとして、自分たち11名を新たな取締役として選任するよう求め、機関投資家や株主たちに呼びかけているのである。

 対する現経営陣は、この提案に反対を表明して、阿部会長らの留任を逆提案。まさに「会長派」と「前会長派」が一騎打ちの格好となっているのだが、背景には3年前に起きた「地面師事件」が未だに尾を引いているからに他ならない。

 コトの発端は、2017年5月に起きた東京・西五反田の土地取引における詐欺事件に遡る。JR山手線の五反田駅から徒歩3分という一等地に建つかつての老舗旅館。その跡地を買い取り、地上30階建てのタワーマンション建設を目論んだ積水ハウスが、土地所有者に扮した地面師一味と契約して、55億円もの巨額の資金をまんまと騙し取られたのだ。

 社会部記者の解説。

「被害者とはいえ、積水ハウスはなぜ架空取引を見抜けなかったのか。本来は土地取引の稟議書に判をつき、いわばゴーサインを出した当時の社長である阿部氏ら役員の経営責任が問われてもおかしくないところ、18年2月に阿部さんは会長に昇格し、和田会長が実質的に解任される電撃人事が発表されたのです」

 表向きは経営陣の“世代交代”だとして事件との因果関係を否定したこの「交代劇」。阿部氏による“クーデター”ではと盛んに報じられたりもしたが、実際は何が起こっていたのか。

「悔しいというか、ここまで会社を築き上げてきて、なんでこんな目に遭わなあかんのかと思いました」

 と振り返るのは、“追放”された和田前会長ご本人。

「事件当時、私は国際事業の新規開拓に乗り出すべく、アメリカや中国などへトップセールスを展開していました。それで国内事業を全て阿部君(※現会長)に任せてしまった結果、会社がこんなことになり……。自らも追われる立場になってしまった。もう一生の不覚やと思っています」

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