スポーツ選手はコロナに感染しやすい? 専門医が明かした意外な理由

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 新型コロナの脅威はとどまるところを知らない。しかし、われわれ一般人以上の危機に晒されているのが、実はスポーツ選手だという説をご存じだろうか。

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 阪神タイガースの藤浪晋太郎選手、サッカー元日本代表の酒井高徳選手などが感染し、海外でも米バスケリーグのNBAや欧州サッカー界などで集団感染が起こっている。

 高い身体能力を持ち、日々過酷なトレーニングをこなすスポーツ選手は、一般人よりも頑丈だというイメージがある。

 では、なぜ彼らが高い感染リスクを抱えていることになるのか。その理由を東京大学名誉教授で、ロサンゼルス、ソウル、バルセロナ五輪にチームドクターとして帯同した武藤芳照さんに解説してもらった。

「激しい運動を日々行うスポーツ選手は一般の人よりも免疫機能が低下するリスクが高く、むしろ風邪などの感染症には弱いのです」

 スポーツ選手が風邪を引きやすいとは意外な話だが、なぜ免疫能力が低下しやすいのだろうか。

「前提として、激しいトレーニングをしていない期間であれば、スポーツ選手は一般人よりも高い免疫機構を持っています。しかし、強化合宿やシーズン開幕中は身体を動かす『行動体力』は向上する一方、病気やストレスに対応する『防衛体力』は下がります。運動はストレスの一種であり、体にストレスがかかると免疫系は元に戻すためにコルチゾールというストレスホルモンなどを分泌します。このコルチゾールには免疫を抑える作用があるのです」(同)

 つまり、屈強に見えるスポーツ選手も、トレーニング期間やシーズン中に限っては、われわれ一般人よりも“弱い”のだ。また、彼らを追い込むのは試合や練習だけではない。度重なる移動が負荷になるのだという。

「宿主の免疫が下がることに加え、気温や湿度など環境の変化も感染要因になるので、選手が高地トレーニングを行う場合、スポーツドクターは風邪のリスクなども計算に入れて練習メニューを組むのです。近年、大相撲の力士が蜂窩織炎という皮膚病にかかりやすくなっており、ケガによる休場も増えています。これは決して彼らが脆弱になったわけではなく、背景には地方巡業の増加による疲労蓄積があると思います」(同)
 
 アメリカや欧州のプロスポーツでは特に試合会場間の移動距離が長く、感染の要因になっているのだろう。

 アスリートの体が感染症に弱い面があるのはわかったが、加えて “スポーツ選手ならでは”の精神的な要因もあるという。これが欧州サッカー界などで集団感染が起こっている背景にもなっているようだ。

「アスリートの多くは体力に自信を持っており、また普段から疲労や痛みに慣れているため、症状が出ても“大したことないだろう”と軽視しやすい特徴があります。そのため、感染していても普通に練習や試合に来てしまい、広まっていくのです。元スポーツ選手に多いのが、病気の初期症状に気づかず、重病化してから発見されるというケースで、一種の“職業病”と言えます」(同)

 こう見てくると、残念ながら各種競技が「無観客だから安心」とも言いづらいようなのだ。新型コロナウィルス感染症は未だ十分解明されていないが、各競技団体が選手への影響も勘案しながら試合やリーグの延期、中止を決めたことは妥当な判断といえるのではないだろうか。

週刊新潮WEB取材班