【新型コロナ】1回の売上は820円の同僚も…都内の法人タクシーに勤務する運転手の告白

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吉原の女の子がどんどん辞めていく

 売上のいいタクシー運転手は、銀座、六本木、歌舞伎町を流すことが多いという。

「私は、夜は銀座を流していますが、人が疎らですね。車はタクシーしか走っていなくて、異様ですよ。夜10時から朝5時までは2割増の料金になるのでタクシーにとっては一番美味しい時間帯です。個人タクシーの中には、この時間帯だけ乗車している人もいます。ところが、夜の自粛のおかげで繁華街はどこも人がいません。銀座や歌舞伎町はダメだが、赤羽はまだいいらしいぞと仲間の運転手が言うので、先日、夜の11時に赤羽に行ってみたら、いつもは人気の磯丸水産が閉店しているじゃないですか。仕方なく駅前のタクシー乗り場に並びましたが、タクシーの行列がなんと200メートルも続いていました。お客さんを乗せたのは4時間半後でしたよ」

 オフィス街の大手町もめっきり人がいなくなった。

「テレワークが普及して、出勤者が大幅に減ったんでしょう。以前は、出勤の時にタクシーを利用する方が結構いましたが、今は全然ダメです。日銀通りを夜流すと、店のシャッターは下りているし、暗くて不気味ですよ。廃墟を走っているみたいです」

 ソープランドの街、吉原もさっぱりだという。

「以前はよく、吉原で働く女の子を乗せました。びっくりするくらい綺麗な子もいましたよ。でも今は、吉原に行く人いないでしょう。濃厚接触ならぬ粘膜接触ですからね、女子大生のアルバイトが、コロナが怖いと言ってどんどん辞めているそうです」

 病院を訪れる人も少なくなった。

「病院は、タクシーにとっていい稼ぎ場所です。長距離の客が多いからです。何年か前に、東大病院から福島のいわき市まで乗せて行ったこともあります。料金は5万円を超えました。ところが今は、余程の重病でないかぎり、病院には行かないようですね。コロナに感染するんじゃないかと、恐怖感があるようです。だから、通院している人も、いつも2週間分もらっている薬を4週間分にしたりして、病院に行く回数を減らしていますよ」

 新型コロナの対策は?

「乗車する前に、車内をアルコールで消毒しています。乗車ごとに、会社からマスクを渡されます。病院からお客さんを乗せた場合は、運転席側の窓を開けます。そしてお客さんが降車すると、全ての窓を開けて空気を入れ替え、車内をアルコールで消毒します。安倍晋三首相は、国民に布製のマスクを2枚配ると言っていますが、布製では感染は防げませんよ。うちの娘がマスクを手作りしているのですが、換気扇のフィルターを切って、マスクの中に入れるといいそうです」

 お客の方もコロナには気を使っているという。

「お客さんが咳をするので、ヤバイなと思っていたら、『この咳はコロナではありませんから。花粉症なんです』とわざわざ断ってくれました。人前で咳はしにくくなりましたね」

 新型コロナの感染拡大が長引いたらどうする?

「あと、2、3カ月も続くようだったら、タクシーの運転手を辞めようと考えています。私の同僚で、1日の乗車で820円しか売上がなかった人もいるんです。一人しか乗せられなかったそうです。街を流しても人はいても乗ってくれません。夜の街は人がまったくいない。これじゃあ、続けられないですね。私は大型二種の免許を持っているので、バスの運転手かトラックの運転手に転職しようかと考えています」

週刊新潮WEB取材班

2020年4月16日掲載

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