もはや人ごとではないコロナ感染 待ち受ける「調査」「治療」のプロセスは

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 ここまで蔓延すれば、もはや“感染”は他人事ではない。では、我が身に疑わしい兆候が現れた後に、何が待ち受けているのか。“陽性”が確認された男性の経験をもとに、コロナ患者が直面する現実に迫る。

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「体調の異変に気づいたのは3月25日の晩でした。会社から帰宅してまもなく熱っぽさを感じて、体温を計ると37・9度。風邪をひいたと思って、その日は早めに寝たのですが……」

 そう振り返るのは、PCR検査の結果、“陽性”と判断された関西在住の40代男性である。彼の場合、翌26日の朝には熱が36度台までひいたため、普段通り出社したという。しかし、

「その後に再び38度近い熱が出てからは出勤を見合わせました。以降は熱が下がらず、咳と下痢が止まらなくなった。加えて、コロナ感染を疑った最大の理由は味覚の変化でした。ニュース番組で感染後は“味覚障害を起こしやすい”と報じられていたので。私の場合は味がしなくなるのではなく、口内から化学薬品のような“ツーン”とした臭いが消えなかった。あと、印象的だったのは“麦茶”。苦みを感じて、信じられないくらいマズかった」

 この男性は基礎疾患があるため、27日に保健所に連絡している。

「保健所では“まずはかかりつけ医を受診してほしい”と言われました。そこで、内科の個人病院を訪ねたら、“発熱が続いていまして”と伝えただけで“あっちのブースに行ってください!”と診察券を突き返された。結局、その病院の隔離ブースでレントゲン写真を撮影して医師の問診を受けたところ“初期の肺炎がある”と。改めて保健所に連絡をした上で、4月1日にようやくPCR検査を受けることになりました」

対症療法しかない

 男性がPCR検査を受けたのは、感染症指定医療機関である総合病院だった。

「粘膜を採取するため、長い綿棒を鼻の奥と喉に突っ込まれましたね。検査自体は5分ほどで終わったのですが、“検体が多すぎるので結果を伝えるのに時間がかかります”と」(同)

 結局、病院からの電話で“陽性”と聞かされたのは、2日後の4月3日。軽症、重症を問わず入院するのが現在のルール。彼も入院することは決まったが、病床が空かないのか、いまだに病院からの連絡はなく(4月7日現在)、自宅で隔離生活を送っているという。

 また、陽性と発覚した後、男性には役所から連絡があり、発症した25日から2週間前までの行動履歴をヒアリングされている。

 そこでは、飲食を共にした相手の個人名や会社名なども詳しく尋ねられた。保健所は、名前の挙がった人物に聞き取り調査を行い“濃厚接触者”かどうかを見極めるという。

 では、この男性のようにPCR検査で“陽性”が確認された患者には、どのような治療が施されるのか。

 東京都感染症情報センターのHPに目を通しても、感染者への対応については〈対症療法を行います〉との記述があるだけだ。

 コロナ取材に当たる社会部記者が解説する。

「確かに、コロナの特効薬は開発されていないため、陽性となって入院しても対症療法しかできません。つまり、患者の咳が止まらなければ咳止めを処方し、高熱が続けば解熱剤を投与するしかない。また、味覚や嗅覚が鈍くなって食欲が減退する患者も多い。病院側は消化の良いうどんなどを薦めるのですが、それでも食が進まない患者には、ブドウ糖を点滴して栄養を補給しています」

 ここまではまだ“軽症”患者への対応だが、“重症化”した場合には、

「呼吸が困難になると人工呼吸器で肺に酸素を送り込むようになります。さらに容体が悪化して、肺が十分に酸素を取り込めなくなれば、志村けんさんも用いた体外式膜型人工肺“ECMO”が使われます」(同)

 未知のウイルスに恐怖を感じるのは当然だろう。だからこそ、現実をきちんと知った上で、正しく恐れることが肝要なのだ。

週刊新潮 2020年4月16日号掲載

特集「『緊急事態宣言』を生きる 」より

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