「コロナで西洋の時代が終わる」と小躍りする韓国人、それを手玉にとる中国人

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「西洋は終わった。東洋の時代が始まる」と韓国人が歓声を上げる。新型肺炎の流行を期に東西の「支配関係」が逆転するというのだ。彼らの心の奥底を韓国観察者の鈴置高史氏が分析する。

危機対応に失敗した米国とEU

鈴置:「西洋が世界をリードする時代は終焉した」と主張する記事が韓国紙の定番になりつつあります。理由は「西洋は新型コロナウイルスによる肺炎を抑え込むのに失敗した。一方、東洋は社会の強みを生かして乗り切った」からです。

 私が見た中で、もっとも早く指摘したのは朝鮮日報の趙儀俊(チョ・ウィジュン)ワシントン特派員。3月30日に載せた「『西洋』ブランドの没落、その後」(韓国語版)です。ポイントを翻訳します。

・(世界の)メディアと専門家はまず、「西洋(Western)」というブランドの没落を予想した。明らかにウイルスは中国から発したが、壊滅的な打撃を受けた場所はイタリアをはじめとする欧州だった。欧州連合(EU)の共同繁栄という高尚な目標はコロナの前で、互いに国境を閉じ、まともに闘うこともできずに崩れ落ちた。
・世界最強国たる米国は中国を上回る感染者を出し、初期対応に完全に失敗した。民主主義と資本主義に代表される「西洋」勢力が全世界的な危機に適切には対応できないことを見せつけた。
・もちろん、これが共産独裁社会である中国の体制優位を意味するわけではない。しかし、コロナへの対処で相対的に成功する成果をあげた韓国、シンガポール、台湾などを含む「東洋」式の社会・経済システムの強みを改めて知らしめるきっかけになったのは確実だ。

 趙儀俊特派員は「西洋イメージの凋落と東洋への評価」との認識変化を指摘しました。ただ、筆はそこで止めています。世界の人々の見方が変わる結果どうなるか、までは書いていません。

儒教文化が防疫に威力を発揮

 そこを踏み込んだのが、中央日報のコ・デフン首席論説委員の「西洋優越主義の終焉?」(4月3日、日本語版)です。「西欧の覇権が揺らぐ」と主張したのです。以下が前文です。

・新型コロナウイルス感染症は挑発する。米国と欧州の西洋優越主義の神話に疑問を投げかける。「グローバルリーダーの米国」「先進国の欧州」という固定観念を拒んでいる。国際秩序を主導してきた大西洋同盟を揺るがす。
・19世紀の植民地主義、20世紀の第1次・第2次世界大戦を経て、ソ連解体と冷戦終結、米国の独走まで200年の長い歳月、世界に号令をかけていた西洋の覇権を脅かす。飛行機に乗ったウイルスにもろくも翻弄される自らの実体と墜落に西欧は慌てている。

 コ・デフン首席論説委員が「西洋の覇権が崩れる」理由にあげたのは(1)ウイルスとの戦いにおいて、米国政府が内外で指導力を発揮できなかった(2)独・英・仏・伊なども防疫に失敗し、先進国の虚像がはがれた(3)韓国・中国・シンガポール、台湾の防疫が世界で注目され、個人よりも社会と国家を優先する東洋の価値、序列と絆を重視する儒教文化の良さが評価された(4)西洋優先主義の源泉は富と力だったが、中日韓のGDPの合計は米国と同等になった――の4つです。

にじみ出た「西洋への怨念」

 中央日報のコラムニスト、裴明福(ペ・ミョンボク)氏の「コロナ事態であぶり出された西側先進国の素顔」(4月9日、日本語版)は「防疫で苦闘する西洋」を冷ややかに見ただけではありません。「東洋を馬鹿にしてきた西洋」への怨念ものぞかせました。文章を整えて引用します。

・(西洋の安易な初期対応の)根底には中国やアジアに対する偏見がある。文化的優越意識から始まったオリエンタリズムでもある。コロナウイルスが伝播する人獣共通感染病は、中国や東南アジアのように「奇異な」食文化を楽しみ、衛生観念が徹底できないところから発生する疫病だから、西側先進国とは無関係だという偏見と傲慢が最初からあった。

 そして裴明福氏は「西洋から東洋への覇権の移動」に期待を寄せたのです。

・コロナ以降の世の中は今と大きく変わるのははっきりしている。その時、世の中はどのような様相を呈しているだろうか。中国が米国を凌駕する超強大国の地位にのぼる可能性は?
・コロナ事態で機能不全を見せている欧州連合(EU)は、コロナ以降も存続できるだろうか。コロナ危機で比較的善戦している韓国や台湾、シンガポール、香港が東アジアの新興先進国に仲間入りする可能性はないだろうか。

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